ガンジス川は汚すぎてヤバい？沐浴すると病気に感染するってホント？

ガンジス川は、インドのヒンドゥー教徒にとって聖なる川です。巡礼者が聖地で沐浴をするだけでなく、地元の人たちは、川の水を洗濯や飲料水に利用します。ガンジス川の源流は、ヒマラヤ山脈の氷河から流れでる冷たくきれいな水なのです。しかし、インドの都市を通るにつれて汚い濁った水にかわります。

インドにあるガンジス川は、ヒマラヤ山脈の南側を流れています。本流の最上流部はバギーラティー川と呼ばれており、水源はガンゴートリー氷河です。水源では、氷河の下から雪解け水が音を立てて流れ出しています。

氷河から流れでる冷たい水は最初はとてもきれいですが、インドの人口密度の高い都市を通るにつれ濁った水に変わります。

ガンジス川には、流域の周辺都市からゴミや下水が流れこみます。ガンジス川の水は屋外排泄に使われることもあり、水質汚染が深刻です。インド最北部では、ガンジス川は濁って汚くなっており、下流では川の水が汚れで泡立っています。

ガンジス川の聖地には沐浴場が設けられ、多くの信者が沐浴を行いますが、沐浴の際に溺死する人の数も多いです。

ガンジス川の水質汚染は本当に深刻なレベルで、地元メディアも「沐浴をすることは危険」と報じています。どれほど危険かというと、一番汚いところで基準値の23倍もの大腸菌が検出されているのです。しかし、地元の人たちは水質汚染を深刻には考えておらず、飲料水や生活用水として使用しています。

ガンジス川は、2018年の政府調査で、水質汚染が深刻だとわかりました。ガンジス川流域の人口が増え続けるばかりで、生活用水だけでなく工場排水なども増加していることが原因です。川岸では火葬したあとの遺灰だけでなく、遺体をそのまま流すこともあります。

ガンジス川の処理能力は追いついておらず、水の80パーセント以上が汚染されています。

ガンジス川では、100ミリリットルあたり500個という、基準値に対し20倍の大腸菌が検出されました。基準値の23倍のふん便性大腸菌が検出された地域もあります。しかし聖地の信者たちの危機感は薄く、多くの巡礼者が沐浴をしたり水を飲んだりしています。

信者以外の旅行客が沐浴をしたり川の水を飲用すると、感染症などの病気になる危険が高いです。

ガンジス川が汚い理由は、生活用水として使用されていることが主因です。排水が垂れ流しになっていたり、川を汚す原因になるようなものを流しているからです。動物の死体や、人の遺灰や遺体がそのまま流されることもあります。川の沿岸も不衛生で、ゴミの不法投棄は日常的です。

ガンジス川が汚い一番の理由は、下水が流れていることです。インドの都市部では人口増加にともない、毎日大量の汚水が排出され、大きな社会問題となっています。未処理の汚水がそのまま流されていますが、地元の人たちは汚染されら川の水を水源として生活しているのです。

インドでは下水が未発達で処理率は10%と非常に低く、川の汚染の大きな原因は、生活排水といわれています。

生活用水だけではなく、工業排水もガンジス川を汚す原因です。インドでは工業排水を管理する規制や対策が遅れており、多くの工場からの排水が川に垂れ流しになっています。川岸には、工場が立ち並び、危険な化学物質を川に流しているのです。

ガンジス川だけでなく、インドにある14の主要河川と流域はすべて汚染されています。

人の排泄物もガンジス川を汚す原因です。インドでは約5億人が屋外排泄をしています。ヒンドゥー教の教えではトイレは「不浄」とされており、家にトイレがあることを好ましく思わない人が多いのです。家にトイレがない人たちは川辺の茂みで排泄し、排泄物が川の水を汚します。

インド政府は家庭用トイレの普及を試みていますが、2020年現在普及していません。

ガンジス川が汚い理由として、ゴミの要因もあります。ガンジス川沿いには、ゴミが直接すてられているのですが、インドでは「ゴミは道路や外にだしておけば、清掃人が収集をしてくれるだろう」と考える人が少なくありません。しかし、実際の収集能力は外のゴミの量に追いついておらず、ゴミは投棄されたままになっています。

有害なものも適切な処理がされることなく、捨てられています。

ガンジス川には、遺灰や遺体も流れています。ヒンドゥー教徒にとって、死んだあとは「母なる川にかえす」との信仰があるからです。身分の高い人は、川岸で火葬した後遺灰を川に撒きますし、妊婦や子供、事故で亡くなった人の場合は、火葬せずにそのまま遺体を流します。

貧困層の人は、家族が自分達で遺体を燃やして川に流します。動物の死体を流すこともあるのです。

汚いガンジス川で沐浴すると、免疫のない日本人旅行客は体調を崩す可能性が高いです。長澤まさみさん主演のドラマ「ガンジス河でバタフライ」の影響もあり、ガンジス川で泳いだり沐浴をする日本人旅行客が増えました。

ただ、うっかり汚い川の水を飲むと非常に危険ですし、傷口から菌が入り込み感染症になる可能性もあります。

ガンジス川の水が口に入ると、高い確率でお腹をこわします。口から飲まなくても、体の穴に川の水が入ることにより、体内に菌が侵入する可能性もあるのです。目や耳、おしりの穴から菌が侵入することによって、体調を崩す場合もあります。ちなみに、インド人であっても沐浴でお腹をこわす人はいます。

沐浴した後下痢が1週間以上続くこともありますが、日本の市販薬は効きません。

ガンジス川に入るとき、もし体に傷があるとより深刻です。傷口から川の危険な菌が体内に入り、感染症になってしまいます。沐浴する前に傷がなくても、川の中でケガをする可能性もありますし、1週間後に症状がでることもあります。

ただの風邪かと思っていたら、死に至る病気の可能性もゼロではありません。沐浴をした場合、最低でも1週間は様子をみましょう。

インドのヒンドゥー教徒にとってガンジス川は、「聖なる川」で崇拝の対象です。サンスクリットでは、ガンジス川のことをヒンドゥー教の川の女神を意味する「カンガー」とよんでいます。川の流域は肥沃な土地で水も豊富なので、農業にも適していますし、地元の人たちの生活用水にもなる大切な川です。

ガンジス川に面する聖地では3年に1度、クンブ・メーラと呼ばれる集団沐浴の祭が行われます。この祭では何千万人もの巡礼者が沐浴を行い、川の水で口をゆすいでいます。ガンジス川の水に「罪を洗い流す効果がある」と信じているからです。

信仰の側面だけではなく、ガンジス川はインドの人たちに水を供給している役割もありますが、川の水の80パーセント以上は汚染されています。

インドのモディ首相は、2015年に「10億人をこえるヒンドゥー教徒が崇拝する、ガンジス川を浄化する」ことを公約に掲げ、30億ドルもの予算を投じる予定でした。しかし、実際に状況改善のために使われた予算は10億ドル以下だと、2018年の監査で判明しました。

2020年現在、川の水質を改善する目標は達成できておらず、水質汚染は深刻なままです。

ガンジス川での沐浴は、正直おすすめできません。もし、「インドの雰囲気にひたるために、どうしても沐浴したい！」という場合は、自己責任で行いましょう。大腸菌などで、お腹をこわすなどの覚悟しておくべきです。川からあがったあと、すぐシャワーを浴びることをおすすめします。

ガンジス川は意外と深く溺死する人もいるので、川岸から遠くまで泳ぐことはさけましょう。