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なぜ今も廃墟が残っているのか?
最大の謎は、そもそもなぜ廃業したホテルが長年解体されずに放置され続けてしまっているのかということです。今となっては、簡単に解体作業を進められないさまざまな原因が複雑に絡んでいるのでしょう。地元住民にとっても、温泉を楽しむために来る観光客にとっても、廃墟問題の早急な解決が望まれます。
ホテル廃業から10~20年経った現在
鬼怒川温泉の廃墟ホテルは、短いものでも廃業から10年以上、長いもので20年以上経過し、取り壊しされていないホテルが密集しているために廃墟群と呼ばれるに至りました。
一方、廃墟とならずに、経営権が引き継がれリニューアルしたホテルや、産業再生機構の支援を受け新会社のもと経営再建したホテルなど、さまざまなケースが存在しています。
日光市のこれまでの取組
日光市は、2004年から地域再生事業として国の補助金を活用し、鬼怒川温泉と上流の川治温泉にある5棟の経営実態がないホテルの土地を買い取り、建物の取り壊し・撤去を行ない、公園や遊歩道に整備しました。
長年経過し、ようやく2020年度に、なお残る廃墟ホテル解体の費用や周辺への影響の調査研究が始まったばかりで、実際の取り壊し・撤去の実現には時間がかかりそうです。
ホテル解体の難しさの原因
ホテル解体の難しさの一番の原因は、お金がかかることです。所有者や管理者と連絡が取れない以上、彼らによる解体は難しく、1棟解体するのに最低でも2億円かかると言われる費用を市が負担するとなると簡単なことではありません。
しかし、廃墟ホテルに不法投棄された粗大ごみの撤去や不法侵入に備える防護柵の設置などの応急措置にもお金がかかっているのも事実です。
廃墟が残る立地的な原因
廃墟ホテルのうち、「元湯星のや」「きぬ川館本店」「鬼怒川第一ホテル」は国道と鬼怒川に挟まれた狭い土地にホテルが建てられており、立地的な状況も取り壊し作業を難しくしている原因です。
周辺の源泉施設や国道への影響など慎重な事前調査が必要とされ、取り壊し作業や土砂の撤去に伴う川への汚染問題なども精査しなければならず、解体は簡単には進みません。
鬼怒川温泉の廃墟群にみる社会問題
鬼怒川温泉の廃墟群は、観光面でのイメージの問題だけではなく、廃墟として注目されることによる治安悪化や年数経過による危険性の問題など、さまざまな社会問題を抱えています。今後への課題が多く、日本全体の社会問題として考えることが必要です。
撮影スポット・心霊スポットとして注目
廃墟ブームを受け、鬼怒川温泉の廃墟は撮影スポットとして注目され、SNSには廃墟ホテルの写真が多く投稿されています。
廃墟に付き物といえるのが、心霊現象の噂です。きぬ川館本店のかっぱ風呂から悲鳴が聞こえるという心霊現象など、マニアの中では心霊スポットとして注目され、温泉街の本来の目的とは異なる訪問客もにわかに増えています。
治安悪化・危険性の問題
鬼怒川温泉で問題となっているのは、廃墟への不法侵入による治安悪化や、建物倒壊の恐れなどの危険性です。
廃墟ホテルに入って浴場や客室など内部を撮影しているケースが見受けられますが、廃墟とはいえ私有地につき勝手な侵入は禁止されています。建物の荒廃化もかなり進み、猿など動物の侵入もあることから倒壊の恐れがあり近づくと危険です。一刻も早い取り壊し・撤去が望まれます。
鬼怒川温泉だけではない日本の問題
廃墟ホテルの問題は、鬼怒川温泉だけではなく、解体されず廃墟として残る全国各地のホテル・旅館などが抱えている問題です。鬼怒川温泉は全国的に人気の温泉地であることに加え、規模の大きな廃墟ホテルが密集しているため、注目されています。
ホテル解体に向けて今度どう対応していくかという課題についても、全国各地の廃墟ホテルを抱える観光地や自治体が関心を持っています。
廃墟が残る鬼怒川温泉の今と未来
鬼怒川温泉では、廃墟問題を抱えつつも、近年外国人観光客が増え、震災が原因で低迷していた観光需要も回復してきた矢先、コロナ禍でまたも苦境に陥っています。首都圏に近いことは、復活へのメリットとして再び期待できる点です。
鬼怒川温泉は、廃墟ホテルの撤去問題に加え、経営難に陥った際の救済・再建対策など、将来に向けての課題も多く抱えています。
出典:photo AC