蕗俵の特徴①:お供えもの
蕗俵は田開きの儀礼のお供えものであり、田の神さまに豊作を祈ってささげました。田開きの儀礼は田植えの初日か、初日前の大安日に行い、蕗俵は収穫物に見立ててお供えします。かつての農村では、米作りの作業の節目ごとに田の神さまに豊作や作業の無事を祈り、感謝してお供えものやお祭りをしました。
田んぼの畦や水口にお供えする
蕗俵は田んぼの畦(あぜ)や水口(みなくち)、家の神棚などにお供えしました。お供えの仕方には地域差があり、伊賀では稲の苗・ススキ・栗の枝・蕗俵を各13個用意して1つのざるに入れてお供えします。大和高原地域の一部ではお供えして拝んだのち、ささげた蕗俵を分けあって食べて精を付け、田植えに取りかかりました。
豊作の祈りが込められている
意味 | ||
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蕗俵 | 大豆 | 大粒の米が多く実るように |
蕗の葉 | 富貴につながるように | |
俵型 | 米俵 | |
供物 | 13個 | 1年間の月の数+田の神さまの分 |
ススキ | 多くの芽が出るように | |
栗の木 | 大粒の米が実るように |
蕗俵には豊作の祈りが込められており、食材やお供えの仕方に意味があります。大豆は「大粒の米が多く実るように」と意味し、蕗の葉は「富貴(ふうき)につながるように」という意味です。お供えする数が13個であるのは12か月分と田の神さまの分を意味します。
一緒にお供えするススキは「芽が多く出る」象徴で、栗は「大粒の実」の象徴です。
蕗俵の特徴②:便利な携帯食
蕗俵は便利な携帯食であり、農村の生活の知恵が詰まっています。蕗俵は大変な田植えのエネルギーを補うおやつとして、朝食と昼食の間の10時ごろに食べられていました。蕗の葉で包むことでおにぎりの風味をよくし、葉の抗菌作用で守ります。農作業中に使いやすく、家事の負担も減らせるうえに、環境にも優しいです。
持ち運びやすい
蕗俵は持ち運びやすく、田んぼへ農具や稲を運ぶ道中もじゃまになりません。蕗の葉は茎のように見える葉柄(ようへい)と呼ばれる部分を付けたままで使います。長く丈夫な茎を持ち手にして肩に担いだり、腰に下げたりして田んぼまで持って行きました。
手を洗わずに食べられる
蕗俵は手を洗わずに食べられるため、農作業の合間の短い休憩時間にも手軽に口にできます。葉の包みがあることでおにぎりに触れずに食べられますし、葉は使い捨てですので泥の付いた手でも問題ありません。手を洗いに行かずにパッと食べて休憩でき、すぐに作業を再開できました。
ゴミも洗い物も出さない
蕗俵はゴミも洗い物も出さないため環境に優しく、家事も減らせます。おにぎりを食べ終わると、蕗の葉は自然物ですので野に捨てて土に還していました。帰りの荷物を減らせますし、家に帰ってからの洗い物も減らせます。
出典:写真AC