ホタルイカの身投げ
富山県の「春の風物詩」にもあげられるホタルイカの身投げ。ホタルイカは言うまでもなく海の生き物です。そのため「身投げ」はホタルイカが海から外(海岸)へ打ち上げられることを意味しています。なぜ、海中にいるホタルイカが身投げをするのでしょう?いつ、その現象を見ることができるのでしょう?ここでは、ホタルイカの生態やホタルイカの身投げについてご紹介していきます。
ホタルイカとは?
ホタルイカは、水深100メートルから600メートル前後の海中に生息する回遊性の生き物です。体長はおよそ6センチと小さく、日本では日本海全域と、駿河湾から東北沖にかけての太平洋側の一部に生息しています。ホタルイカには体に数百ともいわれる発光器があるとされ、青白く、幻想的な光を放つのが特徴です。
ホタルイカの発光器
ホタルイカは腕に3個と目のまわりに5個、そして、体に数百個の発光器があるといわれます。体にある数百個の発光器は、おもに腹側に集中し背側にはほとんどありません。発光器の役割は外敵から身を守ったり威嚇したりするためです。ホタルイカの腹側に発光器が集中しているのは海面近くに浮上する際、光を放つことで海上から差し込む光と同化し、敵から身を守るためだと考えられています。
ホタルイカの回遊
日本海に生息しているホタルイカは、春に山陰沖で孵化すると、対馬暖流にのって日本海を北上します。その後、秋田沖までのぼりつめたところで成長し、今度は産卵のために南下。孵化から1年後には、生まれ故郷である山陰沖に戻ってきて産卵すると言われます。ホタルイカの寿命はわずか1年。山陰沖から秋田沖までを往復するように回遊している生き物です。
ホタルイカの交接と寿命
ホタルイカの交接は11月から2月。オスのホタルイカは交接が終わると海の藻屑と消えます。しかし、メスのホタルイカは「産卵」という仕事が残っているため、オスよりは長生きです。とはいえ、1か月程度、長生きするというだけでオスもメスも短命であることに違いはありません。
ホタルイカはなぜ富山が有名?
秋田沖まで北上したホタルイカは産卵のために再び南下しますが、その途中で、主流から離れた大量のホタルイカが富山湾へと流れてきます。(理由は解明されていません。)富山湾では、産卵期のまるまると太ったメスのホタルイカを定置網で捕るため、やせ細ったものはほとんどいません。そのため、富山湾でとれるホタルイカは大きさが揃っているうえ、肉厚でおいしく、全国にその名が知られるようになりました。
ホタルイカ漁
ホタルイカは日本海沿岸で水揚げされていますが、定置網漁でホタルイカを捕っているのは富山湾だけです。富山湾以外の地域では底引き網漁でホタルイカを捕っており、漁の仕方が異なります。現在、ホタルイカの水揚げ量日本一は富山県ではなく兵庫県がトップです。
富山県の定置網漁
富山湾で行われているホタルイカの定置網漁は、海中の一定の深さに網を張ってホタルイカを捕る漁法です。富山湾以外では底引き網漁でホタルイカを捕っていますが、底引き網漁は海底に網を張り海中の魚を根こそぎ捕るため、ホタルイカの大きさにもばらつきがあります。しかし、富山湾では産卵期の海面近くにいるメスのホタルイカを捕っているため、大きさにばらつきがほとんどありません。
ホタルイカ漁の解禁日
ホタルイカ漁の解禁日は漁港によって異なりますが、富山湾では毎年3月1日がホタルイカ漁の解禁日です。春の訪れを告げるホタルイカ漁の解禁日には、毎年、ニュースなどでその日の水揚げ漁が報じられ、ホタルイカ漁の様子をテレビなどでご覧になったことのある方も多いでしょう。
ホタルイカの産卵期
ホタルイカの産卵期は2月から6月です。なかでも、3月から5月にかけての3か月間が産卵期のピークといえるでしょう。富山湾には、ホタルイカ群遊海面と呼ばれる海域があり、産卵期を迎えたホタルイカが大量に群遊海面へ押し寄せるため、その様子を多くの人に見てもらおうとピーク時には「ほたるいか観光船」が出港されています。
富山湾のホタルイカ群遊海面
ホタルイカは日本海に多数生息していますが、産卵の時期になると富山湾沿岸に大量に押し寄せます。そのため、富山市を流れる常願寺川の河口付近から魚津港までの沖合1.3キロの海面は「ホタルイカ群遊海面」と呼ばれ、昭和27年に国の特別天然記念物に指定されました。これほど大量にホタルイカが押し寄せる海域は世界でも類を見ないといわれます。
ほたるいか観光船
ほたるいか観光船は3月から5月にかけて、富山湾にある滑川漁港から出港しています。観光船からは、定置網によるホタルイカ漁を間近で見学でき、大量のホタルイカが海面を覆いつくす姿には思わず身を乗り出してしまうほどです。人気のある観光船のためすぐに予約がいっぱいになります。観光船に乗船したいと思う場合は早めの予約がおすすめです。
ホタルイカの身投げを見るための必須条件
ホタルイカの身投げを見るには時期や時間、気象条件など満たさないとならない必須条件があります。とはいえ、条件が揃ったからといって必ず見られるわけではありません。地元の人ですら、なかなか見ることができない光景です。だからこそ、神秘的であり多くの人を魅了するのでしょう。けれど、行ったからにはぜひとも見たいもの。きれいなホタルイカの身投げを見るための必須条件をおさえておきましょう。
ホタルイカの身投げを見るための必須条件:時期・時間
ホタルイカの身投げは、2月下旬頃から5月にかけて見られる現象です。ホタルイカは産卵後、通常は海の底へ戻っていきますが、方向を見失ったり潮の流れに捕まったりしたホタルイカは、海岸へ打ち上げられてしまい二度と海へは戻れません。身投げの時間帯もその年によって違いがありますが、おもに深夜(23時頃)から明け方(3時頃)の時間が狙い目といえるでしょう。
ホタルイカの身投げを見るための必須条件:気象
ホタルイカの身投げは前日に雨が降っているとまず、見ることができません。身投げの光景を見るには、新月の前後で、波が穏やかな暖かい気温の続く日です。さらに、満潮が深夜から明け方にかけて最大となり、数日間、安定した気温・天候のときが条件としては最高といえます。とはいえ、相手は生き物。漁師さんや地元の釣具店では必ず最新情報をゲットしましょう!
ホタルイカの身投げを見るための必須条件:海岸・場所
ホタルイカの身投げを見るには場所や海岸選びも大切です。ホタルイカは富山湾のすべての海岸にいっせいに打ち上げられるわけではなく、場所選びに失敗するとまったく見ることができないこともあります。下記5か所の海岸は、富山湾のなかでも外せない場所ですので要チェックです!
おすすめの場所・海岸 | 住所 |
海老江海浜公園 | 富山県射水市海老江 |
八重津浜 | 富山県富山市四方西岩瀬石瀬 |
岩瀬浜 | 富山県富山市岩瀬古志町 |
ホタルイカミュージアム(裏) | 富山県滑川市中川原410 |
滑川海浜公園 | 富山県滑川市 高塚 |
ホタルイカすくい
ホタルイカが海岸近くへ押し寄せてきた場合は、網などですくって持ち帰ることができます。ただ、海岸に打ち上げられ時間が経っているホタルイカは、砂をくちにしているため食用には不向きです。持ち帰る場合は少なくとも膝まで海中に入り、網ですくうことになります。しかし、海水温が低い時期なのでそれ相応の準備が必要です。
ホタルイカの身投げについて:まとめ
ホタルイカの身投げを見るためには、場所や気象条件をくまなくチェックし最新の情報をゲットするのが一番の近道です。最新の情報は地元の漁師さんや釣具店で聞くこともできますが、春先にはSNSでもホタルイカの身投げ情報が手に入ります。ホタルイカの身投げは春先の寒い時期に起こるきれいな現象です。温かい服装でお出かけくださいね!
出典:https://www.photo-ac.com/