治安が悪く、危険と言われている飛田新地とは?
飛田新地を語るのに「遊郭」について触れないわけにはいきません。飛田新地の治安がヤバいと言われる理由の一つには「飛田遊郭」という前身が関係しています。もう一つの理由としては、隣接する位置にある「あいりん地区」という危険な場所の存在です。これら二つの理由との関係を中心に、飛田新地の治安について解説していきます。
「遊郭」とは?その歴史
日本における「遊郭」の成立は、古く安土桃山時代にまで遡ります。江戸期においては幕府が公許するかたちで、全国に20を超える遊郭が誕生していました。中でも大阪の「新町遊郭」や京都の「島原遊郭」に江戸の「吉原遊郭」は、三大遊郭と呼ばれるほどに栄えていたのです。
江戸から明治大正とつづく遊郭の誕生
時代が明治大正と変わっても遊郭の誕生はつづきます。全国の主たる都会には大小さまざまな遊郭が誕生し、「飛田遊郭」も大正時代に築かれた日本最大級の遊郭と言われていました。遊郭では悲喜こもごもの変遷がありましたが、決定的な転換期となったのは1958年に施行された「売春防止法」です。
飛田新地はかつて遊郭であったことは事実
飛田新地では前述の売春防止法施行以降、法的や公的には遊郭のような大っぴらな営業が不可能となったのです。ここに日本独特の文化とも言える「建て前」が必要になる要素があります。つまり、飛田新地にある各店は「料亭」という看板を掲げて、飛田新地全体は「飛田料理組合」という組織が管理するかたちを取るようにしたことです。
自由恋愛という建て前
性行為をふくむ営業内容は料亭と遊郭で異なることはありません。けれども、それは「料亭内におけるお客と仲居の自由恋愛」という建て前で逃れる方法を採用して、法の規制をクリアしたわけです。こうした経緯が飛田新地に、ある種の影を落としていることも否定できません。
西成区における飛田新地の立ち位置
飛田新地は行政区としては西成区に属しています。西成区が治安の面で危険な地域と、勘違いされているということも少なからずあるようです。後の章で詳しく述べますが、西成区は他の大阪市内各区とデータ的に比較してみても、突出して治安が悪い地域・場所ということはありません。
あいりん地区と飛田新地は隣り合わせ
上に示した地図を参照していただければ分かるように、地図左上の「あいりん地区」と右下の「飛田新地」は、ほぼ隣り合わせる格好となっています。あいりん地区の治安上の問題点はたしかに存在していて、過去20回を超える暴動事件が起きたことも事実です。
あいりん地区と飛田新地の治安はイコールではない
大規模な暴動の他にもあいりん地区では犯罪発生なども多く、スラム化した状態はけっして良い治安状態と言えません。しかし、その治安の悪さをストレートに飛田新地の治安に結びつけるのは問題です。「飛田新地には犯罪が全く起きていない」とまでは言いませんが、飛田新地料理組合の自主的な管理努力もあって、治安は比較的に安定して来ています。
飛田新地の治安を数字で見る
大阪は観光やグルメ目的で訪れる観光客も多い、魅力的な町です。一方で西成区の地域を観光などで訪れる方は、女性はもちろん男性も多くありません。その理由として、心理的な要因となっているのが、西成区に含まれる飛田新地やあいりん地区の存在です。
繁華街と犯罪発生率や治安の悪化との因果関係
一般論として、人とお金が集まる繁華街の犯罪発生率や治安の悪さは、比例関係にあると考えてよさそうです。過疎化の激しい地域・場所に反社会的勢力が存在していないように、繁華街の存在は反社会的勢力の存在とも関連しています。日本第二の都市である、大阪もまた例外ではありません。
繁華街を控える区の犯罪発生率の高さ
大阪市の24区を見ると、犯罪発生率がもっとも高いのは西成区ではありません。後に示す比較表を見ても分かるように、ワーストは北区や中央区です。北区には「キタ」、中央区には「ミナミ」と呼ばれる大繁華街が控えています。観光客をはじめ、そこに住民票を有しない人々を引き寄せる力を有しているのが繁華街です。
人口数とは比例しない犯罪発生率
犯罪が自然発生的なものなら、犯罪発生は人口の多い地域・場所が多いことになります。けれども、犯罪発生率を見ると必ずしも人口が多い自治体の率が高いことにはなっていません。そこから考えても、繁華街の存在は大きく犯罪発生率と関連しています。
大阪市各区別の犯罪件数比較
区名 | 犯罪件数(件) | 人口(人) | 犯罪発生率 | |
1 | 中央区 | 6,939 | 95,457 | 7.3% |
2 | 北区 | 6,514 | 125,983 | 5.2% |
3 | 平野区 | 3,033 | 195,755 | 1.5% |
4 | 淀川区 | 2,857 | 177,868 | 1.6% |
5 | 浪速区 | 2,802 | 71,001 | 3.9% |
6 | 東淀川区 | 2,750 | 175,631 | 1.6% |
7 | 東住吉区 | 2,346 | 126,231 | 1.9% |
8 | 生野区 | 2,300 | 129,838 | 1.8% |
9 | 西成区 | 2,272 | 110,925 | 2.0% |
24 | 此花区 | 824 | 66,421 | 1.2% |
上記の比較表は平成28年における数値を比較したものです。西成区の犯罪件数順位は大阪で9位で、犯罪発生率も2.0%となっています。因みに、大阪市全体の数値は人口が2,702,033人で犯罪件数が55,295件、犯罪発生率は2.0%です。このデータを見る限り「西成区の治安が特別悪い」と、言われる理由はありません。
西成区は大阪できわめて平均的な地域
全部で24区ある大阪の区の中で、犯罪件数が西成区は9位とほぼ中間の位置にあります。犯罪発生率を見ても2%で、大阪市平均の2%とまったく同じです。逆に中央区や北区はこれまで述べてきた通り、大繁華街の存在が犯罪発生と密接な関連性をもっていることを数値が証明しています。
飛田新地を訪れる際の治安上の注意
西成区を観光や、そこに住むための事前調査などで訪れるにあたって、治安の点ではなんら問題のないことが分かりました。最近では鉄道マニアのごとく、飛田新地を観光もしくは個人的趣味で訪れる人も少なくはありません。そんな場合に、飛田新地で注意をしなければならないポイントを紹介しておきます。
登録有形文化財の「鯛よし百番」
現に、本来の料亭として営業もしている「鯛よし百番」は、国の登録有形文化財として指定されており、撮影に訪れる人もめずらしくありません。住む目的で治安を調査する人もいれば、趣味で全国の遊郭跡地を巡り歩いている人もいます。最近ふえてきたのは、物見高い外国人の姿です。
飛田新地の独特な地域の不文律
住むための事前調査にしろ、趣味の観光目的にしろ特に女性は、夜間の散策には注意しなければなりません。女性だけでなく男性であっても、飛田新地やあいりん地区の場所に土地勘がない場合はなおさら危険です。それ以外にも、飛田新地でNGな行動を解説します。
撮影は一番のNG!
住むための偵察や趣味の観光では、デジカメやスマホでの撮影シーンは当たり前になっています。しかし、飛田新地で一番にNGな行為が撮影です。料亭の建築物をはじめ、人物像にいたるまで基本的に飛田新地では動画・静止画の如何にかかわらず、撮影は禁止されています。
プライバシー侵害の恐れ
撮影行為の中でも、特にNGなのが料亭の店先に座っているような女性のショットです。多くの場合、女性は他の仕事も兼ねています。プライバシーを侵害することで、想定外の不利益を与えるハメにもなりかねません。また、撮影以外にもNGな行為が「冷やかし」です。あくまでも料亭の人々はビジネスの最中という配慮をしなければなりません。
治安は決して悪くない飛田新地
危険な場所と思われていた飛田新地です。けれども、西成区全体の治安に問題がないことや、払うべき注意をして訪れれば飛田新地も意外と安全と分かりました。その近辺に住むのか、趣味で訪れるのか、はたまた遊ぶのか、治安の決して悪くない飛田新地を楽しんでみてください!