「彫金」とは何?
みなさんは「彫金」という技術をご存知でしたか?簡単にいうと金や銀、銅をはじめとする真鍮、鉄、アルミ、プラチナなどの金属に、鏨(たがね)や鑢(やすり)という道具を使い、模様を彫る金属工芸の技法のことです。身近な金属工芸品として人気もあります。
彫金の基本情報
彫金は日本では「和彫り」と呼ばれ、かんざしなどの装具、馬の馬具を装飾するものでした。時代を経て寺院や神社、兜や甲冑(かっちゅう)の装飾金具、刀のつば・鞘(さや)の飾り彫りとして作られていました。現代では指輪やペンダントヘッドなどのジュエリーデザインとして彫られ人気があります。
彫金の道具
- 弓のこ自在弦
- つかみばし
- ハンドドリル
- 平やすり
- 丸やすり
- 平たがね
- 角やすり
- ラジオペンチ
- 木づち
彫金の技法について
日本全国に彫金工芸の伝統が息づいていますが、ここでは「東京彫金」の技法について紹介します。「東京彫金」とは元禄時代の彫金師、横谷宗珉が考案した「町彫」を基準に現代に伝える技法です。その特徴は鏨(たがね)を巧みに使った技法に特化しています。鏨ひとつで精密な模様を彫り表情豊かな作品に作り上げていきます。
彫り | 地金を鏨(たがね)で模様を彫る技法。毛彫り、蹴り彫り、片切り彫りなどがあります。使用する鏨を変えることで模様の表現を変えます。 |
透かし | 図案に沿って地金を鏨(たがね)や糸鋸(いとのこ)で、切ったり彫ったりする技法 |
打ち出し | 地金を熱して柔らかくして、裏側から木づちなどでたたき盛り上がりを出して、その表面にタガネを使って模様を浮き出させる技法。 |
象眼 | 地金に違う種類の金属をはめ込んでいく技法。 |
「彫金」の魅力!現代に伝わる匠の技
現在も伝統工芸としての彫金は受け継がれています。そして、ジュエリーやアクセサリーのアクセントとして、更に身近なものとして受け継がれているのです。伝統工芸の枠を超えて自らのオリジナリティを求め、彫金に挑戦をする人も増えています。
技能別のアクセサリーとジュエリー
千社札:彫り
シルバーの地金に勘亭流文字や寄席文字で名前を彫ったものです。象眼を使って別の金属で家紋を入れたりすることも可能です。
ウエスタンベルト:打ち出し+透かし
異素材との組み合わせではベルトが人気です。バックルの部分は「打ち出し」技法、ベルトの飾りは透かしで模様が彫られています。
ペンダントヘッド:透かし
精巧な透かし模様の真ん中に彫留彫刻の技法で宝石が施されています。宝石をはめ込むには「彫留彫刻」という技術が必要になります。
バングル:打ち出し+象眼
バングル部分は打ち出しで腕まわりのサイズに加工をし、象眼によって異素材の金属と彫留で宝石を施してあります。
「彫金」を習ってみよう!東京編
このようにアクセサリーやジュエリーに彫金を用いたものは沢山あります。ですから、自然と彫金アクセサリーを自作してみたいと思う人も増え、人気が高まっていると言えるでしょう。そこで、「彫金」をマスターするまでのステップとして、「体験教室・ワークショップ」「スクール」「通信教育」から、自分にあった習う方法を探してみましょう。
体験教室・ワークショップ
「彫金」は難しそうに思われますが、実は今とても人気のあるクラフト工芸でもあります。ただ、「興味はでてきたけど、スクールで習う前に体験をして決めたい」「アクティビティー感覚な体験、デートコースに組み入れたい」など、少しだけ体験できるところがあるといいですよね。そんな、体験教室やワークショップを紹介します。
まずは体験できるスクール
「atelier nine」は、宝石商、宝飾店がたくさん建ち並ぶ街で有名な「御徒町」にあるスクールです。持っているスキルをアップさせたり、ショップ販売できるレベルまでを習うことができるスクールが運営している1日体験教室です。「槌目リング」作りが体験できます。
所要時間 | 120分 |
参加費用 | 5,000円(税抜き) |
開始時間 | 電話予約・要確認 |
「OZUジュエリー工房」は、数々のジュエリーショップが軒を連ねている中央区銀座にあります。指輪だけではなく、バングルやペンダントヘッド制作を習うことができる教室です。所要時間や費用は制作するものによって変わります。趣味として習いたいカジュアルコースがある彫金スクールの運営です。
所要時間 | 120分~180分 |
参加費用 | 4,000円+材料費 |
開始時間 | 火曜日~金曜日:13時30分~21時00分 土曜日・日曜日:11時00分~18時00分 ※定休日:月曜日 |
初心者向けワークショップで体験
若者に人気の渋谷にある「LaVagueジュエリースクール」が運営しているワークショップでは、彫金の基礎である槌目(つちめ)模様の平打ちリング作りが体験できます。ワークショップ以外にも1日体験コースがあり、スクールでは本格的に習う目的に合わせたカリキュラムのコースがあります。
所要時間 | 180分 |
参加費用 | 7,560円(材料費込み) |
開催日・時間 | 要確認/定員制 |
二人の共同作業、結婚指輪を作る
世田谷区玉川には体験教室ともワークショップとも違うスタイルで、彫金が体験できる「彫金工房 ステアクラフト」があります。それは結婚指輪を二人で作れるという工房です。結婚という人生の岐路で二人の強い絆と誓いを深めるために作ってみませんか?スタンダートコースとオリジナルコースから選ぶことができます。
所要時間 | 5~6時間 |
費用 | 80,000円~150,000円(ペア/税込み) |
要予約 | 予約可能な日がカレンダーで確認できます。 |
資格取得からプロになるためのスクール
ちょっとした興味や趣味探しで「彫金」を習えるスクールを探してみましょう。初心者やハンドメイドショップで販売できるまでのスキルが学べるものと、本格的な職業として極められるスクールまで。幅広いスクールが検索結果でヒットすると思います。そんな、プロを目指す人のための東京のスクールをご紹介しましょう。
日本伝統の彫金が学べる
武蔵野市吉祥寺にある、日本の伝統彫金を世界に広めるアーティストを養成するスクールです。日本の彫金技術は世界からも認められています。そのノウハウを習得し世界に通用するエキスパートを目指します。見学・1日体験入学もできます。
コース名 | 日本伝統彫金コース |
費用 | 授業料:1,100,000円(入学金、工具・材料費別途) |
期間 | 1年間(720時間)※2年生も有 |
時間割例 | 1限目 11時00分〜13時30分 2限目 14時30分〜17時00分 3限目 18時00分~20時30分 ※平日はフレックスタイム |
基礎からデザインまで総合的に学ぶ
「日本宝飾クラフト学院」は日本の宝飾・ジュエリーの中心拠点ともいえる台東区御徒町には、彫金の基礎からジュエリーに関する専門的なことを学べるスクールがあります。技術の基礎からデザイン・宝石鑑定までこまかく技術と知識を学ぶコースが分かれています。入学検討者には体験講座もあるから、うれしいですね。
コース名 | 専科:宝飾科 |
期間 | 週1単位受講:2年間 週2単位受講:1年間 ※1科目1単位:2時間45分 |
費用 | 週1回(月4回)12,650円 週2回(月8回)22,000円 ※入学金・工具材料費は別途 |
時間割 | 月~土 午前クラス 10時00分~12時45分 午後クラス 14時00分~16時45分 夜間クラス 18時00分~20時45分※土曜日は無し |
彫金は通信教育で学べるの?
技術を身に付けたあとのプラスα
彫金の技術を習うには道具や工具、器具が必要なので通信教育には不向きのようです。ただし、自分の思い描くアクセサリーやジュエリーを作るためには、デザインや図案を学んだり、宝石を埋めこむ技術を学んだりする必要があります。基本的な技術はスクールや教室で習い、修了した後や平行しながらスキルアップ技術を通信教育で習うという方法もあります。補助的な役割になるのが通信教育です。
通信制高校で学んでから、実技を磨く
あなたがもしジュエリーデザイナーを目指したい10代だったら、デザインや知識を高校で学んでから、宝飾関係の会社や工房に就職し実践の中で彫金の技術を習得することも可能です。単位制の高校の特徴を活かしながら通学か通信教育(スクーリング有)のどちらか選択することができます。アクセサリーショップを開業することも夢ではありません。
専門学校で総合的に学ぶ
自由度が高く自分で時間割を組む単位的なスクールではなく、またスクール卒業後に通信教育などで必要なスキルを学ぶものでもない、進みたい道へのカリキュラムが時間割として、しっかり組まれた授業を受けるには「専門学校」がおすすめです。時間割通りに学ぶので効率の良さでは一番でしょう。
「彫金工芸」を東京都内で探そう!
東京都内で見ることのできる「東京(江戸)彫金」の技はいくつもあります。特に東京の伝統工芸を守っている地域は、台東区、江東区、葛飾区、足立区などの下町に集中しています。各区には伝統工芸品を紹介している工芸館なども見つかりますよ。神社も数多く点在し博物館でもみることもできるのです。では、人気のスポットをいくつかご紹介しましょう。
『神輿』宮本卯之助商店
運よくお祭りの日に合えばお神輿も見ることができますが、お祭りがなくてもお神輿を近くで見ることのできるスポットがあります。台東区浅草の「宮本卯之助商店」のショールームに行くとお神輿だけでなく、祭りに関する祭礼具を見られます。また、東京メトロ銀座線「浅草駅」地下改札口1番出口付近にも常設展示されています。
『神社』浅草寺と上野東照宮
浅草寺雷門
浅草浅草寺の4つの山門にはそれぞれ大提灯が吊るされていて、それが名物のひとつにもなっています。下からのぞいてみましょう。そこに見えるみごとな龍の彫り物を囲む部分も彫金による装飾金具です。
上野東照宮 唐門
上野東照宮社殿に続く「唐門」には、江戸時代から伝わる装飾の数々を間近で見られます。社殿の拝観は有料ですが、唐門の見事な装飾は自由に見学できます。
『博物館』東京国立博物館
台東区上野にある東京国立博物館の本館「日本ギャラリー」では、平安時代~江戸時代までの金工技術を彫金の飾り金具で施された、数々の甲冑や刀剣で見られます。時代の移り変わりにあわせて彫金装飾が施される対象が変わり、模様や図案にも変化があることに注目してみましょう。
まとめ
いかがでしたか?彫金は日本が誇る伝統工芸でありながら、もともとはかんざしなどの装身具の装飾でした。それが時代と共に新しい発展を遂げて、現代ではオリジナルのアクセサリーやジュエリーとして、更に身近な工芸品として息づいています。また、趣味として気楽に自分でも作ることが可能だということもわかりました。伝統的な物からカジュアルな彫金の楽しさを「見る・習う・作る」で体験してみてください。
引用:写真AC