世界一雷が落ちるマラカイボの灯台って何?
マラカイボの灯台は世界一雷が多いことで知られる不思議な自然現象です。勘違いされがちですが「マラカイボの灯台」と呼ばれる灯台があるわけではありません。
現象は2~3日に1回決まった場所で起こり、激しい雷が夜通し落ち続けるのが特徴です。マラカイボの灯台はギネス記録にも世界一の落雷数として登録され、世界から注目を集めました。
ベネズエラの湖で起こる自然現象
「マラカイボの灯台」は自然現象の名前で、ベネズエラにあるマラカイボ湖で起こります。マラカイボ湖は南米大陸の北端にあってカリブ海につながっている大きな湖です。
湖の上空は稲妻で夜通し激しく光っているため、昔は海上からもはっきりと確認できたそうです。光る空は灯台と同じように航行の目印になり、マラカイボ湖の雷は「マラカイボの灯台」と呼ばれるようになりました。
1時間に最大3600回も無音の雷が落ちる
マラカイボの灯台は1時間に最大で3600回も無音の雷が落ちます。計算上は1秒ごとに雷が落ちている状態であり、一晩で数万回です。
マラカイボ湖では無音の雷が多く、日没から1時間を過ぎたころに湖畔の湿原で音がしない落雷が始まります。一番激しい深夜の雷は爆音で暴風雨もともないますが、嵐のあとの雷は水平に雲間を走る稲妻で静かです。
1年間に200日以上も起こる
マラカイボ湖 | 233回 |
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石川県金沢市 | 4.5回 |
マラカイボの灯台は1年間に200日以上も起こっており、現地では日常的な光景です。1平方キロあたりの年間落雷数は平均233回であり、日本で雷が一番多い金沢市の4.5回と比べると圧倒的な差があります。マラカイボの灯台が発生する時期は雨季にあたる4~11月で、とくに多いのが9月です。
マラカイボの灯台はどういう原理?
マラカイボの灯台の原理はまだ完全には解明されておらず、マラカイボ湖に雷が多い原因や雷鳴がない原因には諸説があります。有力な説はマラカイボ湖周辺の地形が関係していて、一般的な雷と同じ原理が当てはまるという見方です。
雷が多いのは雷雲ができやすい地形だから
マラカイボ湖で雷が多い原因は雷雲ができやすい地形にあるとする説が有力です。湖は北側でカリブ海とつながっていて、東・南・西側は高く急なアンデス山脈にぐるりと囲まれています。湖上では海から吹き込むあたたかく湿った風と、夜に山から吹き下りる冷たい風がぶつかり、大きな積乱雲ができる仕組みです。
無音なのは遠くて聞こえないから
マラカイボ湖の雷が無音である原因は雷からの距離で、雷が遠いから稲妻は見えるけれど音は聞こえないとする説が有力です。一般に雷の光は40~50キロ先からでも見えますが、雷の音は約10キロ先までしか届きません。
マラカイボ湖は日本の琵琶湖の約20倍の広さで、周囲には遮る木や明かりがほぼないです。湖畔の湿原や対岸で起こる遠い雷でもよく見えますが、雷鳴は聞こえません。
マラカイボの灯台の歴史
マラカイボの灯台の歴史は大航海時代にヨーロッパ人が南米に進出してきて以降のものが知られています。ヨーロッパではカリブ海を航行するときの天然の灯台として知られていました。
現象自体はヨーロッパ人が進出してくる前から起こっていたようです。先住民の人々は「カタトゥンボの稲妻」と呼び、祖先の魂の訪れとして信仰する地域もありました。
最古の記録は16世紀
マラカイボの灯台についての最古の記録は16世紀のもので、叙事詩に侵入者除けの光として役立つさまが描かれています。
詩はスペインの詩人ロペ・デ・ヴェガの作品で、題材は敵国イギリスの海賊で海軍中将だったフランシス・ドレイクの南米遠征です。ドレイクらはスペイン植民地のマラカイボに夜間の奇襲を試みますが、光る空に照らし出されて失敗したという描写があります。
2回だけ発生しない年があった
マラカイボの灯台は記録に残っている限りでは2回だけ発生しない年がありました。1回目は1906年で、アメリカ大陸で大地震が頻発した年です。2回目は2010年で、エルニーニョ現象の影響を受けてか年が明けてから4月まで現象が起きず、現地は騒然としました。
マラカイボ湖周辺の人々の暮らし
マラカイボ湖周辺では現地の人々が湖上の高床式家屋で生活しています。湖上に建つ家は雷が命中して全壊してしまうこともあるようです。現地の人々は湖の水を生活用水として使い、湖での漁をなりわいとしており、生活の中心に湖があります。雷は災害だけでなく恩恵ももたらす存在であり、現地の人々は長く共存してきました。
落雷が漁業に役立っている
マラカイボ湖では落雷が漁業に役立っており、人々は雷が起こる前後を利用して漁を行っています。湖の魚は雷の光でおどろいて混乱し、網にかかりやすくなるそうです。雷が激しくなる前に網を仕掛けておき、翌日回収すると多くの魚が獲れます。
ベネズエラきっての観光名所にもなっている
マラカイボの灯台はベネズエラきっての観光名所にもなっています。コロナ禍前はガイドツアーも実施しており、雷が好きな人や不思議な現象が好きな人などが世界中から訪れていました。ツアーでは湖上の高床式家屋に数泊して雷を鑑賞するプランもあり、村を散策したり、熱帯雨林の動物を観察したりもできます。
マラカイボの灯台は驚異的な自然現象
自然現象とは思えない!一度現地で見てみたいなぁ
マラカイボの灯台は驚異的な自然現象であり、一晩に数万回もの雷が無音で激しく降る光景は世界に類を見ません。雷が多い原因や無音である原因はまだ解明中ですが、マラカイボ湖周辺の地形が影響しているとする説が有力です。
マラカイボの灯台はファンタジーに出てきそうな不思議な自然現象です。漫画「ワンピース」に登場する島の1つのモチーフになっているとも。