ナイトタイムエコノミーの意味とは?
「ナイトタイムエコノミー」とは、夜間における経済活動のことを意味します。夜間帯(一般的に日没から日の出まで)に娯楽、文化などの商業を充実させることで消費拡大を促進し、より経済を活性化させることを目的としています。
ナイトタイムエコノミーで変わること
ナイトタイムエコノミーは、インバウンド消費拡大による経済効果が期待されています。深夜営業の飲食店、文化施設やイベントなど、夜間の魅力を含めたコンテンツを充実させることは、さらなる消費の拡大と雇用の確保にもつながります。
インバウンド対策として注目されている理由
近年、インバウンドによる外国人観光客の流入が増え、インバウンド対策は、日本の経済にとって欠かせないものとなりました。
外国人観光客は、日没後も観光や娯楽を楽しみたいと考える人も多く、ナイトエコノミーを活性化させることで、旅行消費額の拡大が期待できます。地域の夜間の活用は、外国人観光客だけでなく近隣地域からの訪問促進にも繋がります。
ナイトタイムエコノミーの経済効果
新経済連盟は、ナイトタイムエコノミーの経済効果を、新たに約80兆円の利益が見込めると予想しています。
既にナイトタイムエコノミーを実施している英国では、国内総生産(GDP)の約6%である約660億ポンド(9兆9,000億円)がナイトタイムエコノミーによる消費額と言われています。(参考:ナイト・タイム・インダストリー・アソシエーション(英国))
ナイトタイムエコノミーのメリット
2021年の東京オリンピック、2025年の大阪万博を控え、外国人観光客の流入はさらに増えると予想されます。今後、日本経済の下支えとして期待されるインバウンド対策の一環として欠かせない「ナイトタイムエコノミー」のメリットについて解説していきます。
①旅行消費額の増加
ナイトタイムエコノミーによって、もっとも期待されるメリットは「旅行消費額の拡大」です。現在日本で夜間営業を行っているのは、居酒屋やバー、クラブなどの飲食・娯楽施設ですが、その多くは大都市圏に偏っています。夜間を利用したコンテンツの拡大は、宿泊や飲食、おみやげ品の購入などの消費が期待できます。
②訪日客の旅行満足度向上
2つ目はのメリットは「訪日客の旅行満足度向上」です。外国人観光客は、夜間の娯楽や観光に慣れています。訪日外国人観光客へのアンケートには「多くの訪日客が日本は夜間に楽しめる娯楽が少ない」という意見があります。
夜のコンテンツが増えることは、外国人観光客の旅行満足度の向上に直結することを意味します。訪日リピーターや新たな訪日旅行客の獲得などが加速するきっかけになるでしょう。
③地域活性化
3つ目のメリットは「地域活性化」です。夏祭りや花火大会などのイベントは、地域の認知度向上や訪問客を増やします。夜間のイベントに合わせて、行政や地域の小売店、飲食店、宿泊施設が連携することで、さまざまな消費やビジネスチャンスが広がることでしょう。
④観光事業の成長
最後に4つ目のメリットは「観光事業の成長」です。夜間コンテンツの造成によって、観光収益の増加が期待できます。地域の特色を活かした新たな観光スポットやイベントなどを造成することは、地域の観光産業を活性化させ、景気上昇のきっかけになります。観光業界の更なる成長は、日本経済の成長を意味します。
ナイトタイムエコノミーのデメリット
ナイトタイムエコノミーは、日本経済活性化の潤滑油として大きなメリットがありますが、一方で夜間人口の増加によるデメリットも多く考えられます。ごみや騒音、治安などが問題視されています。ナイトタイムエコノミーによるデメリットについて解説していきます。
①環境汚染
ナイトタイムエコノミーによるデメリットのひとつが、ごみや騒音などによる「環境汚染」です。日本のナイトタイムエコノミーの一環とも言える「渋谷ハロウィン」は道路のごみの散乱状況や若者のモラルなどが問題視され、毎年ニュースで報道されています。
夜間人口の増加は、ごみや騒音の増加を伴います。官民が一体となって、地域の衛生を維持していくことが必要になるでしょう。
②治安悪化
2つ目のデメリットは「治安悪化」です。飲酒による酔払いによる事故や未成年の夜間外出や犯罪の多発が考えられます。日本が世界から評されている「安心安全」が崩れる恐れがあります。犯罪防止や泥酔者対策など、地域住民を守るための体制の確保が求められるでしょう。
③過重労働の増加
3つ目のデメリットは「過重労働の増加」です。夜間まで営業時間を延長することは、各産業の稼働時間の延長を意味します。
労働人口の減少が問題視されているなかで、夜間帯に働く労働者を確保することは難しいです。既存従業員がさらに過重労働を強いられることも否めません。働き方改革と反対に、夜間の労働体制が過重労働を加速させることになるでしょう。
ナイトタイムエコノミーが成功している海外の事例
海外では、すでにナイトタイムエコノミ-の取り組みが進んでおり、成功している事例がたくさんあります。ここでは海外の事例をご紹介します。世界でも有数の観光都市であるニューヨーク、ロンドン、アムステルダム、ソウルのナイトタイムエコノミー対策です。
①ニューヨーク
ニューヨークは、ナイトタイムエコノミーを積極的に推進している都市として有名です。ブロードウェイは夜20時からの公演、ナイトクラブ、夜間のアート鑑賞など、夜間も充分楽しめ、海外からの観光客から高く評価されています。
時間を気にせず、アートやエンターテイメントを堪能できるニューヨークの夜間の取り組みをご紹介します。
夜でも楽しめるエンターテインメント
ニューヨークは、夜間でも演劇やアートまどのエンターテイメントや文化を楽しめる街です。例えば、メトロポリタン美術館の閉館時間は21時まで、ブロードウェイのミュージカルも夜の講演が充実しています。
観光客だけでなく、地元のニューヨーカーも就業後にエンターテイメントやアートに触れることができ、満足度の高い余暇を過ごせます。
地下鉄の24時間運行
ニューヨークは、海外で一番最初に地下鉄の24時間運行体制を導入した都市です。終電を機にすることなく、夜間の活動を思う存分楽しめます。
ブロードウェイの終演後や美術館の閉館後に利用できるレストランやバーも多く、深夜を超えても人の往来が絶えません。深夜帯でも利用できる地下鉄の運行は、ナイトタイムエコノミー対策の重要な課題と言えるでしょう。
②ロンドン
ロンドンは、世界を代表する観光都市のひとつで、2019年には1955万人の観光客が訪れました。観光資源が多い都市ならではのナイトタイムエコノミーの取り組みをご紹介します。
ロンドンの事例では、経済波及効果のメリットだけでなく、デメリットを解消する新たな体制についても触れていきます。
参考:ユーロモニターインターナショナル
観光資源の夜間利用
ロンドンは、ビッグベン、ウエストミンスター寺院、テムズ川など、世界的に有名な観光資源が溢れています。夜間の特性を生かしたライトアップのイベントやクルーズなどのコンテンツが観光客に人気です。
文化的背景としてもパブ文化が定着しており、観光スポットを楽しんだあとにビールを楽しめるパブが充実しています。夜間を通じて、イギリスの文化を体験できます。
安全な治安を認定する「パープルフラッグ」制度
ロンドンでは、2012年から「パープルフラッグ」制度を導入しています。ナイトタイムに事業が集中する地域に、一定の安全性が確保されていると認定されると「パープルフラッグ」の称号が与えられます。
地域の安全性をブランド化することによって、イメージの向上、地域経済の収益増、地域のパートナーシップの強化を啓発する意味が込められています。
③アムステルダム
アムステルダムは、世界遺産にも登録されている運河が人気な観光都市です。ライトアップされた夜間の街並みが美しいことでも知られています。オランダは大麻や売春の合法国としても有名です。「自由な国」と呼ばれるオランダの夜の防犯体制についての取り組みを紹介します。
夜の市長「ナイトメイヤー」
アムステルダムは世界ではじめて「ナイトメイヤー」を採用した都市です。ナイトメイヤーは「夜の市長」という意味で、昼間の市長とは異なり市政権は持ちません。夜間の経済活動を推進するために、民間事業者と行政を繋いでいます。
アムステルダムでは、夜間のトラブルが多発していましたが、夜間の管理体制が強化され、ナイトメイヤーは世界でも導入されるようになりました。
④ソウル
ソウルは、深夜遅くまでオープンしている飲食店やショッピング地区が存在します。若者にはナイトクラブが人気で、夜間帯を楽しめるアジアの観光都市として世界中から人気があります。深夜の時間帯も楽しめるソウルの日常をご紹介します。
夜間ににぎわうグルメやショッピング
ソウルでは、夜間ににぎわうファッションストリート「東大門市場」が有名です。この地区では夜から営業を開始する卸問屋が多く、小売りでも販売してくれるので、地元の若者や観光客に人気があります。
飲食店も夜間も遅くまでオープンしているお店が多く、深夜帯に焼肉店やカフェなどを利用する若者や観光客の姿も多いです。
日本のナイトタイムエコノミー
日本でもインバウンド対策の一環として、ナイトタイムエコノミー対策を実施し始めています。民間企業の対策はもちろん、自治体やDMOが協力して、観光による地域活性を目指しています。大都市圏を中心に海外からの観光客を対象にしたナイトタイムエコノミーの取り組みや体制をご紹介します。
①東京
東京は2021年に東京オリンピックを控え、海外からの観光客に対するナイトタイムエコノミー体制が充実しています。東京ならではの観光資源を生かしたコンテンツが訪日観光客に人気があります。東京の夜の魅力を海外に発信できる人気のアクティビティーをご紹介します。
東京湾のナイトクルーズ
東京で人気の夜間コンテンツのひとつが、東京湾のナイトクルーズです。伝統的な屋形船や、東京の夜景を鑑賞しながら遊覧できるクルーズなど、コースや周遊時間や船舶の種類も豊富でさまざまなニーズに対応できます。
昼間には味わえない東京の魅力が体験できるので、インバウンドの観光客から好評です。ナイトタイムエコノミー戦略のひとつとして注目されています。
②大阪
大阪はアジア圏からの航空券の発着数がNO,1を誇る関西国際空港があります。アジア圏からのインバウンド消費が高く、海外からの観光客が圧倒的に目立っています。商人文化が根付く大阪で。夜ならではの大阪体験ができる観光コンテンツをご紹介します。
夜の大阪を体験できる割引チケットやパス
大阪には「OSAKA NIGHT CLUB PASS」という訪日外国向けのツアー商品があります。大阪のナイトクラブを有効期間中自由に入場できるパスです。
アジア各国のナイトクラブが活況の中、日本のナイトクラブの情報はなかなか外国人に届いていません。大阪のナイトクラブをナイトカルチャーの魅力発信地として、官民が一体となってPRしています。
③札幌
北海道は、スキーや雪、自然などアクティビティが豊富で全国第2位の旅行消費額を誇ります。台湾やタイなど、雪の降らない地域のインバウンド需要も高く、札幌にも多くの観光客が訪れます。札幌では、季節やイベントを通じたナイトタイムエコノミーの対策についてご紹介します。
さっぽろ雪まつり
さっぽろ雪まつりは、毎年2月上旬に開催される雪と氷の祭典で、官民連携の1年でもっとも大規模なイベントです。雪像や表情にプロジェクションマッピングやライトアップを行うことで夜間の活用を拡充しています。
開催時間は23時までなので、夜間ならではの景色をゆっくり楽しめます。毎年テーマが変わるので、客だけでなく周辺地域からの定期的な訪問も期待できます。
今後、注目されるナイトタイムエコノミー
ナイトタイムエコノミ-の意味や具体的な対策、今後の体制などについての解説はいかがでしたか?
2021年の東京オリンピックを控え、日本は経済対策として一段とインバウンド対策に力を入れています。メリットとデメリットを踏まえた体制をしっかり組んで、官民協力して取り組んでいく必要があります。ナイトタイムエコノミーによる日本の経済成長が楽しみです。