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田んぼで見かけるピンクの塊はジャンボタニシの卵
毒々しい色のあれって卵なんだ!毒があるのかな…?そもそもジャンボタニシって?
田んぼの稲や用水路の側面についている濃いピンク色の塊は、ジャンボタニシの卵です。ジャンボタニシは、稲を食べる困った外来種であり、多くの自治体では、卵や貝を見かけたら駆除するよう呼びかけています。ジャンボタニシの卵は、毒々しい見た目のとおり毒があるため、素手で触ると危険です。
ジャンボタニシとは?
分類 | 原始紐舌(ちゅうぜつ)目リンゴガイ科 |
---|---|
和名 | スクリミンゴガイ |
俗称 | ジャンボタニシ |
学名 | Pomacea canaliculata |
英名 | Apple snail |
原産 | 南米 |
ジャンボタニシは南米原産の淡水にすむ巻貝で、正式な和名は「スクミリンゴガイ」です。ジャンボタニシはタニシとは異なる種であり、タニシのような浄水(ろ過)機能はなく、水槽に入れておくと何でも食べつくすので嫌われます。
食用に輸入されたが売れず野生化
ジャンボタニシは、1980年代前半、タニシに代わるコスパのよい食糧として輸入されましたが、需要が伸びず捨てられ、野生化しました。ジャンボタニシは雑食で食欲が旺盛ですので、水田では「天然の除草剤」として導入してしまう例もあり、どんどん増えています。
生息地は関東以西
ジャンボタニシは寒さに弱く、国内での生息地は関東が北限で、集中している地域は九州です。ジャンボタニシは、0度で3~4週間しか命が持たず、氷点下6度では1日も持ちません。日本では、冬を越せない個体もいますが、暖冬がつづくと、越冬率が上がって生息地も北に広がる恐れがあります。
環境省が指定する「重点対策外来種」
ジャンボタニシは、稲を食べる害貝で繁殖がとても早いため、環境省が「重点対策外来種」に指定しています。リンゴガイ科は、2020年現在、輸入や飼育に規制はありませんが、生息地を広げないよう注意が必要です。ジャンボタニシは、アジア諸国でも害貝であり、世界の「侵略的外来種ワースト100」に指定されています。
ジャンボタニシとタニシの違い
ジャンボタニシ | タニシ | |
---|---|---|
分類 | 原始紐舌目リンゴガイ科 | 原始紐舌目タニシ科 |
和名 | リンゴガイ | タニシ |
分布 | 関東以西 | 日本全国 |
南米・アジア・ハワイなど | 南米・南極をのぞく世界各地 | |
種類 | スクミリンゴガイ・ラプラタリンゴガイ | ヒメタニシ・マルタニシ・オオタニシ・ナガタニシ |
登録 | 重点対策外来種 | 絶滅危惧Ⅱ類(マルタニシ) |
食性
ジャンボタニシ | タニシ | |
---|---|---|
食性 | 雑食 | 雑食 |
おもな食べ物 | 植物・沈殿物 | 微小藻類・沈殿物 |
食べ方 | 壁面についたコケをこそぎ取ったり、水草をかじり取る | 水草や壁面についたコケをこそぎ取る |
沈殿物をすくい取る | ||
水中の浮遊物をこし取る | ||
水槽の中 | 水草を食べつくす | 水草はほぼ食べない |
水を浄化する |
ジャンボタニシとタニシの食性はともに雑食ですが、ジャンボタニシのほうがより大きいものを食べます。ジャンボタニシは、タニシより頑丈な歯(歯舌・しぜつ)を持ち、植物(とくにやわらかい草)や魚の死体などをかじるように食べるのが一般的です。
繁殖のしかた
ジャンボタニシ | タニシ | |
---|---|---|
産み方 | 卵を産む | 稚貝を産む |
1年に産む数 | 数千個 | 30匹以上 |
雌雄 | 異体 | 異体 |
ジャンボタニシとタニシの繁殖のしかたは方法もペースも異なり、ジャンボタニシの繁殖の速さは圧倒的です。タニシは、卵を体内でふ化させて稚貝を産みますが、ジャンボタニシは卵のまま産み、頻度も高いので、1匹のメスが1年に産む数は2桁も違います。
見た目と大きさ
ジャンボタニシ | タニシ | |
---|---|---|
触角 | 4本(長短1対ずつ) | 2本(1対のみ) |
薄い。長い1対は細長くのびている | 太めで、長くはない | |
殻の形 | ほぼ球体 | ほぼ円すい |
螺旋上部 | 短くなだらか | 長く突き出している |
巻き方 | 右巻き | 右巻き |
フタ | 底面にするとぐらつく | 底面にすると安定 |
殻高³ | 最大:8cm | 最大:6~7cm |
国内に多い:5~6cm | 国内に多い:5cm以下 |
ジャンボタニシとタニシの見た目の違いは、大きさに差がない稚貝のうちははっきりしません。
ジャンボタニシの成貝の見た目は、貝殻全体が丸っこくて、らせん上部が小さくなだらかであり、大きさは5~6cmが一般的です。わかりやすい見分け方は、貝のフタを閉じて、フタを底にして置いた状態の違いで、ジャンボタニシであればぐらつきます。
そのほか
ジャンボタニシ | タニシ | |
---|---|---|
水温 | 10~28℃ | 5~30℃ |
移動方法 | 水面を泳ぐ・歩く | 歩くのみ |
移動速度 | 速い | 速くはない |
呼吸 | 水中ではエラ・陸上では肺 | エラのみ |
ジャンボタニシとタニシの違いは、耐えられる水温・移動する速さ・呼吸のしかたにもあります。
ジャンボタニシは、日本在来のタニシより寒さに弱く、1センチ以下または2.5センチ以上の個体は越冬率が低いです。ジャンボタニシは、水生のタニシとは異なり水陸両用で、活動期はタニシより移動が速く活発であり、フタのない水槽に入れると、すぐに脱走します。
出典:写真AC