沈みゆく国を脱したツバル
「温暖化で沈みゆく国」として知られたツバルですが、現在も沈んでいません。ツバルが有名になった当時は、わずか数年で沈んでしまうかのような報道により話題となりました。
しかし実際は、沈むどころか少しずつ面積が増加していることがわかってきました。さまざまな支援や温暖化防止対策の成果だけでなく、自然の変化による緩やかな拡大も面積増加の要因です。
ツバルの面積の推移
面積 (㎢) | 増加面積 (㎢) | 増加率 (%) | |
---|---|---|---|
1971年 | 25.2 | - | - |
2014年 | 25.9 | 0.735 | 2.9 |
ツバルの面積は、過去40年間で2.9パーセント(0.735平方キロメートル:サッカー場90個分の広さ)も増加しています。
ニュージーランドのオークランド大学の研究チームが、航空写真や衛星写真をもとに、1971年から2014年までの変化を分析した結果で、イギリスの科学誌であるネイチャー・コミュニケーションズへ論文として発表しています。
ツバルの国土は拡大していた!
ツバルの海面は上昇しているにもかかわらず、国土は拡大していました。浸食で減少した面積よりも、堆積によって拡大した面積のほうが大きかったのが理由のひとつといわれます。
現在人口が集中する首都付近では、自然破壊や環境負荷によって浸食が進み、面積が減る一方で、人口が少なく風や海流の変化があった地域では、堆積により面積が増加しています。
観光地としてのツバル
ツバルは観光を主産業とする国です。海外からの援助が多いことや、英語が公用語であることから、観光客にフレンドリーな気質だといわれます。
一方でツバルへを訪れるには、フィジー共和国を経由しなければならず、時間も手間もかかります。年間観光客も2000人ほどと世界最少です。簡単にたどり着けないツバルは、訪れる価値があり、ゆっくりと過ごしたい観光地です。
美しく再生された海洋保全地域
ツバルの海岸は各国の支援により美しく再生されました。コンクリートブロックによる護岸や埋め立てによって、砂浜の浸食を防いできた地域もあります。
一部の海岸は、日本のJICAや民間企業の協力で、傷ついたサンゴを保護するなど人々の憩いの場になるまで回復しました。地形や生態系を考慮し、現地調達可能な資材でかつ長期保全が可能な工法によって自然が復元されました。
どこまでも続く水平線
ツバルではどこまでも続く、美しい水平線を堪能できます。自国の島も含めて隣接する陸地が少ない島国であることや、海抜が低いために砂浜から水平線を見る目線が低いことが理由です。
慌ただしく通行する船や飛行機はほとんどないため、時間を忘れて美しいサンゴ礁や海の青さ、空の大きさを楽しめます。
面積が拡大しているツバル
ツバルの面積は、数パーセントですが拡大しています。海面上昇は続いているものの、今や「沈みゆく国」ではありません。
しかし今後も拡大していくかどうかは不明であり、自然の影響を受けやすいという点では、拡大の事実を楽観的にとらえることは難しいです。生態系や自然に配慮した長期的な保全により、少しずつ確実に拡大していくことが理想でしょう。