イスラム教とは
イスラム教とは、唯一絶対神のアッラーを信仰する一神教です。偶像崇拝を排除し、アッラーへの奉仕を重要視しています。もともとは多神教でしたが、創始者のムハンマドが予言を受けたことから一神教へと転じました。イスラム教の信徒はムスリムと呼ばれ、さまざまなルールが課せられています。
いくつもの宗派があるイスラム教
イスラム教は主に「スンニ派」と「シーア派」という二大宗派にわかれています。シーア派はイランやイラクを中心としていて、全体の1割ほど。9割弱はスンニ派、そのほかシリアなどではアラウィ派と呼ばれる宗派もあります。スンニ派はムハンマドが遺した教えや慣行を重要視するのに対し、シーア派はムハンマドの血統を重要視するという違いがあり、宗教対立の問題になっているのです。
ISIL(イラク・レバントのイスラム国)はスンニ派
世界各国でテロを起こし、問題視されているISIL(イラク・レバントのイスラム国)は、スンニ派です。ISILはスンニ派の中でも、イスラムの理想的な社会作りのためには暴力を容認する、いわゆるイスラム過激派。 世俗的な価値観を認めず、武力による支配を良しとするため、ムスリム政権にとって危険分子のひとつとなっています。
過激な宗派によるテロも
2001年、アメリカの同時多発テロを皮切りに、世界各国ではアルカイダやISIL、タリバンなどによるテロ事件が起きています。もともとイスラム教は平和的宗教ですが、民族や宗派の対立によって、イスラム過激派が台頭してきました。彼らにとっては違う宗派はもちろん、異教徒や、ムスリムでありながら西洋文化に親しんでいる人たちはすべて敵。そのため、ISILなどは同じ宗派がいる国でテロを起こしています。
世界のイスラム教徒
2019年現在、世界の人口は77億人です。その中の約20%以上となる18億人以上がイスラム教徒といわれています。イスラム教徒というと中東のイメージですが、世界最大のイスラム人口はインドネシア。人口の約9割を占める2億2000万人がムスリムで、アジアに世界のムスリムの半数以上が暮らしています。ムスリム人口は増えていて、2020年には、世界の4分の1を占めることになるそうです。
日本にもイスラム教徒はいる
日本人にとってムスリムは、普段の生活の中では縁遠く感じますが、日本には10万~20万人のムスリムがいるとされています。彼らは各都道府県に在留していて、主に大都市圏に集中。アジアからの実習生などにも多く、観光客でも数十万人規模でムスリムがいると推計されています。
イスラム教の歴史
イスラム教は歴史が古く、創始者ムハンマドが西暦610年に神の啓示を受け、布教をしていったことが始まりとされています。アラビア語で「神に帰依すること」を意味し、当初はメッカの商人から迫害されてきましたが、西アジアで急速に広がりました。ムハンマドの死後は後継者のカリフが継承、ムハンマドの慣行や言葉をまとめ、聖典「コーラン」が出来上がったのです。その後カリフの後継者問題が発生、スンニ派とシーア派に分かれてしまい現在に至ります。
イスラム教の特徴
イスラム教には主に4つの特徴があります。一神教であることは、キリスト教などと似ていますが、特徴はまったく違います。
- 唯一神はアッラー
- 神であるアッラーの銅像を作らないなど、偶像崇拝は行わない
- 政教一致
- コーランに基づく生活と信仰を遵守する義務がある
豚肉を食べるのは禁止
イスラム教では、豚肉は不浄の物として食べることを禁止しています。豚肉を禁止した理由は、はっきりとはわかっていません。ただ、一神教のひとつ、ユダヤ教でも豚肉を食べることが禁止されています。アメリカの文化人類学者マルビン・ハリスの仮説によると、豚は自身の排泄物の上で転げるため汚く、不浄の物とされたのではないかという仮説をたてていますが、これが正しいとは言い切れず、現在も理由は不明です。
ラマダン(絶食)の時期がある
イスラム教には、1年の中で1ヶ月程度の断食(ラマダン)があります。ラマダンでは、太陽が出ている日中は、何も口にしないというルールです。ただし、高齢者・子供・生理中や妊娠中の女性は免除。ラマダンが免除された人は、貧しい人へ施しを行うという埋め合わせをしなければなりません。
イスラム教における女性のルール
さまざまなルールがあるイスラム教ですが、男性にはない、女性のみのルールが存在するのが特徴です。イスラム教の女性のルールがどんなものがあるのか?調べると、一般的に言われているムスリム女性のルールには、違いがあることがわかりました。
イスラム教の女性のルール①服装は黒だけ?
ムスリムの男性は自由な服装ですが、女性のイメージは、全身黒い服で覆われているというものではないでしょうか?これは、イスラム教の教えによるものと思われていますが違います。これは、イスラム教における「女性は自分の美を親族以外の男性に見せない」というルール。そのため全身を覆っている服装が多いのですが、黒でなくてはいけないという決まりはありません。意外かもしれませんが、服装は自由です。
イスラム教の女性のルール②スカーフは必須?
スカーフも同じく、ムスリム女性の義務ではありません。ムスリム女性がスカーフをしているのは、コーランに書かれている「美しい部分を隠す」からとされていますが、髪を隠すようにとは書いていないのです。これは家庭や地域などの考え方によるため、美しいのは全身だとされるなら、全身を隠しますが、髪は該当しないと考える家庭などではスカーフをかぶりません。ただし、サウジアラビア・イランなど法律でスカーフ着用を義務付けているところもあります。
イスラム教の女性のルール③女性は学校に行けない?
イスラム過激派・タリバンが女性の学校教育を禁止したことで、イスラム教では女性が学校に通ってはいけないという間違った知識が広がってしまいました。むしろ、平等の宗教とするイスラム教では、「男性女性ともに知識を得るべき」とコーランは教えているのです。近年、イランやエジプト・パキスタンでの大学進学率は女性が上回っているという結果がでています。
イスラム教の女性のルール④女性の一人歩き
女性の一人歩きも禁止されているといわれていますが、これもタリバンなどが作ったルールです。女性は自由に外出できますし、一人歩きをしてとがめられることもありません。ただ、女性が生活の中で自転車に乗ることを推奨しない国があるのは事実です。これは、中東など国の事情によるもので、日中が数十度にもなる地域での自転車は現実的ではないからだろうといわれています。一方、イスラム過激派が多い国では、女性の一人歩きを禁止しているところがあるのも現実です。
イスラム教の女性のルール⑤車の運転
イスラム教徒の多い中東では、日常生活の中で女性が運転することを禁じている国がありました。このことがアメリカのメディアによって知らされ、西欧諸国から問題視されたこともあります。これらの国では、女性に免許証を交付しないため運転できないようにしていて、サウジアラビアでは2018年6月まで女性の運転を法的に禁止していました。
イスラム教の女性のルール⑥夫に背いてはいけない
イスラム教の女性が結婚し、家庭に入ったら夫に従うものだとされています。これは妻の堕落を防ぐためだとされ、外泊は基本NG。外出する場合は、夫に許可をもらう、もしくは夫と共に出かけることとされています。また毎日、夫のために食事や着るものを準備。夫のためになる行動が常に求められます。夫にとってマイナスとなる行動をとると、周りから罪深い人とされるのです。
結婚や離婚にも高いハードル
イスラム教の女性が結婚する場合、まず男性もムスリムであることと、同じ宗派であることが基本条件です。宗派が違う場合は、男性側の宗派に鞍替えすることになります。ただしこれはイスラム法の下で結婚する場合。近年は異教徒との結婚を許す国も多くなっています。離婚する場合、女性から言い出しても夫の許可がなければ離婚することはできません。中には離婚まで数ヶ月要することもあるようです。
イスラム教における女性のルールを知っておこう
イスラム教徒の女性には服装をはじめ日常生活の中で、さまざまなルールがあると思われていますが、近年は国によってはかなり緩和されてきていることがわかりました。現在、中東などイスラム教徒の多い国でも女性が活躍する場が生まれてきています。イスラム教の古い歴史の下で守られてきた戒律ですが、すべては「人は誘惑に負けやすいから、そういう場を避けよう」という理念がコーランのベース。これらルールを知っていると、イスラム教徒が多い国に行った場合など、どんなことに気を付ければいいのかわかります。