目次 [表示]
- ゴシック建築とは?
- ゴシック建築はロマネスク建築の発展様式
- ゴシック建築の名前の由来はゲルマン人「ゴート族」
- ゴシック建築の特徴
- ゴシック建築が目指したもの
- ゴシック建築が建てられた時代背景
- ゴシック建築の対象になった建物
- ロマネスク建築からの構造の変化
- ロマネスク建築からの技術の変化
- ゴシック建築の各地への広まり方
- ゴシック建築の歴史
- 初期ゴシック建築
- 盛期ゴシック建築
- 後期ゴシック建築
- ゴシック・リヴァイヴァル建築
- ゴシック建築の代表的な建物
- ノートルダム大聖堂
- シャルトル大聖堂
- ケルン大聖堂
- ウェストミンスター宮殿
- ゴシック建築の有名な建築家は?
- 中世のゴシック様式の建築家
- 近世のゴシック・リヴァイヴァル建築様式の建築家
- ゴシック建築の特徴を知って旅行をもっと楽しもう!
ゴシック建築とは?
ゴシック建築は、中世ヨーロッパで広まった教会建築で、大都市を中心に多く建てられました。中世初期につくられていたどっしりとして内部が狭く暗い様式とは打って変わって軽やかになり、すらっと高くのび、光がたくさん注ぎ込む開放的な様式です。
ゴシック建築はロマネスク建築の発展様式
ゴシック建築は、北西ヨーロッパ中心に建てられていたロマネスク建築の構造や部品の使い方を進化させた様式です。ロマネスク建築は、古代ローマ帝国の治めた地にあたらしく定住してきたゲルマン人たちが、ローマ建築を見よう見まねでつくりました。
技術の発達していたローマほどの石材加工技術はなく、完璧な模造はできませんでしたが、徐々に改良され、ゴシック建築へとつづきます。
ゴシック建築の名前の由来はゲルマン人「ゴート族」
ゴシック建築の名前は、ゲルマン人の一派でドイツ周辺に定住した「ゴート族」からきています。古代ローマ文化を復興させようとしたルネサンスの時代に、従来式としてのゴシック様式を否定したのが由来です。
イタリア人たちが「数学的な均衡を美とするローマ的な建物とは違って粗野だ、異民族の建物だ」とおとしめて呼んだ名でした。
ゴシック建築の特徴
ゴシック建築が目指したもの
ゴシック建築でつくりたかったものは、市民のよりどころとなる「天国への入口」としての聖堂であり、市民の交流の場にもなる開放的な空間でした。上に伸びていくような高い天井・軽やかな見た目にこだわり、神の象徴だった光を幻想的に取り込んだ明るい内部が特徴です。
都市のランドマークである聖堂を、他都市を圧倒するように高く立派にしたいという思いもありました。
ゴシック建築が建てられた時代背景
ゴシック建築が建てられた時代は、ゲルマン人の流れ込みで抗争のつづいたヨーロッパで、勢力図がおちつき、社会も安定して農業の技術開発が進んだころです。農村では生産効率が上がって人手があまり、無職の農民は都市に向かったので、都市は超過密でカオスな空間になりました。
都市の秩序を守るため、都市としての地位を国内で築くために、都市の中核となる教会づくりに力を入れます。
ゴシック建築の対象になった建物
ゴシック様式がつかわれた建物は、大都市の中心に建てるカトリック教会の大聖堂でした。当時は、カトリック教会の教えが生活のすべてを決めている時代であり、都市の象徴となるものは教会だったからです。
ゴシック建築も後期になると、都市の力が強まることで王族・貴族の権威が揺らいできたことで、アピールとして王族らの宮殿建築にもつかわれます。
ロマネスク建築からの構造の変化
高くのび、光あふれる開放的な空間をめざしたゴシック建築では、ロマネスク建築の壁全体で支える構造から、柱と梁で大部分を支える構造に変更します。壁全体で支えるロマネスク建築では、天井を高く・窓を大きくすることはできない点が問題でした。
壁一面に均等にかかっていた負荷を線で受けられるようになり、木枠で全体を決めてから始めるので建物全体の統一感も生まれます。
ロマネスク建築からの技術の変化
目的 | 部位 | 技術の変化 |
---|---|---|
力を分散させる | 天井① | 交差ヴォールト→交差リブ・ヴォールト |
(交差かまぼこ型天井→骨組み付き) | ||
アーチ② | 半円→尖塔 | |
(半円型アーチ→先端とがり型) | ||
外壁③ | 控え壁→控え壁+フライング・バットレス | |
(控え壁→控え壁+飛び梁) | ||
洗練された印象に | 壁面装飾④ | フレスコ画→ステンドグラス |
(絵画→色付きガラス窓) | ||
彫刻 | 柱に刻む→柱とは別に彫像として |
ゴシック建築の各地への広まり方
フランス | イギリス | ドイツ | イタリア | |
---|---|---|---|---|
12世紀 | 様式完成 | 定着 | ー | ー |
13世紀 | 軽さの追求 | 装飾の複雑化 | 定着 | 部分的に受容 |
14世紀 | 高さの追求 | 垂直性の強調 | レンガ造り | 〃 |
15世紀 | 装飾の追求 | 〃 | 独自の形式 | 〃 |
16世紀 | ルネサンス様式 | 〃 | ルネサンス様式 | ルネサンス様式 |
ゴシック建築の歴史
初期ゴシック建築
初期ゴシック建築は、ゴシック様式の最初の建物と言われるサン・ドニ大聖堂をはじめとして、フランスの北部のパリ周辺で始まります。都市間で競って建てられ、パリやラン、ノワイヨンなどのノートルダム大聖堂ができ、後世のモデルになりました。
パリ周辺からシャンパーニュに広がり、ブルゴーニュやイギリスには12世紀後半、ノルマンディには13世紀に伝わります。
盛期ゴシック建築
盛期ゴシック建築は、フランスでは軽やかさと高さを、イギリスでは装飾をメインに発展します。フランスでは、13世紀前半に再建されたシャルトル大聖堂や、ランス大聖堂・アミアン大聖堂などです。イギリスでは、フランスとは対照的に、ロマネスクのどっしりした雰囲気を残したスタイルがはやりました。
後期ゴシック建築
後期ゴシック建築は地域差の大きい様式であり、2大国フランス・イギリスでは百年戦争や黒死病などで社会が混乱・停滞し、スケールを抑えたスタイルに変わりました。装飾が発展した時期であり、炎模様の窓枠や、イギリスでの森を模した緻密なリブ・ヴォールトや、垂直デザインの強調などがあります。
ゴシック・リヴァイヴァル建築
ゴシック・リヴァイヴァル建築は、近代になって、信仰心のみからもの作りをしていた中世の純粋な精神を復活させようとつくられた建物です。ゲルマン民族のイギリス・フランスを中心に、ローマ風建築を極めた新古典主義や、当時進みつつあった個人主義・功利主義への反発から生まれました。
中世とは異なり、教会建築にしぼらずに工場経営者の別荘や、大学・住宅などにも使われた様式です。
ゴシック建築の代表的な建物
ノートルダム大聖堂
ゴシック建築の代表的な建物の1つ目は、初期ゴシックの代表例であるフランスのパリにあるノートルダム大聖堂です。12世紀後半~14世紀半ばにかけてつくられ、フランスのカトリック教会の中心をになっています。
聖母マリア(ノートルダム)信仰の聖堂のなかでも一番有名で、尖塔が小さく、装飾にはパターンがあるなど、均整がとれた柔らかな印象が強い聖堂です。
シャルトル大聖堂
ゴシック建築の代表的な建物の2つ目は、フランスのシャルトルにあるノートルダム大聖堂(通称シャルトル大聖堂)です。ロマネスク建築でしたが、火事をうけ12~13世紀にゴシック様式で再建したので、尖塔・西側正面・地下礼拝堂などには初期ゴシックの特徴が見られます。
美しさが有名で、とくにステンドグラスに使われている青色が、再現の難しい絶妙な色合いだと評判です。
住所 | 16 Cloître Notre-Dame 28000 CHARTRES |
---|---|
公式サイトURL | http://www.cathedrale-chartres.org/ |
営業時間 | 8時30~19時30分 |
ケルン大聖堂
ゴシック建築の代表的な建物の3つ目は、ドイツのケルンにあるザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂(通称ケルン大聖堂)です。古い様式で建てられた聖堂が焼失したことで14世紀にゴシック様式で再建をすすめますが、宗教改革や黒死病の流行で財政難になり中止されます。
19世紀に再注目されて再開・完成し、世界最大規模のゴシック建築として後期ゴシックの代表になりました。
住所 | Domkloster 4, 50667 Köln |
---|---|
公式サイトURL | https://www.koelner-dom.de/homepage |
営業時間 | 月曜~土曜 6:00~19:30 (5~10月は6:00~21:00) 日曜、祝日 13:00~16:30 |
ウェストミンスター宮殿
ゴシック建築の代表的な建物4つ目は、イギリスのロンドンにある国会議事堂のウェストミンスター宮殿です。11世紀に建てられたのち、19世紀に焼失したため世界大戦をはさんで修復されました。ゴシック・リヴァイヴァル様式で修復されましたが、内部のウェストミンスター・ホールには中世のゴシック様式も残っています。
住所 | 〒SW1A 0AA Westminster, London, UK. |
---|---|
公式サイトURL | https://www.parliament.uk/visiting/?_ga=2.67267289.95292260.1603809332-57182492.1603809332 |
営業時間 | 9:30~15:45(土曜は13:45まで) ※最新の情報を確認 |
ゴシック建築の有名な建築家は?
中世のゴシック様式の建築家
中世のゴシック建築の有名な建築家はおらず、当時はまだ「建築家」という専門職がなかったため、無名の石工や大工が設計~建築までを担当していました。設計専門の建築家が増えてくるのは、紙と鉛筆が普及し「設計図を紙にかき出す」作業が一般化した16世紀のルネサンス建築のころです。
近世のゴシック・リヴァイヴァル建築様式の建築家
近世のゴシック・リヴァイヴァル様式の有名な建築家は、イギリスのオーガスタ・ピュージンと、フランスのヴィオレ・ル・デュクです。ピュージンは、「キリスト教国家なら、自民族が純粋な崇拝の気持ちからつくり出したゴシック様式をこそ建てるべき」と主張しました。
デュクは、フランスで起きた歴史建築の修復ブームのなかで、「ゴシック建築は合理的な構造を持つ」と強調します。
ゴシック建築の特徴を知って旅行をもっと楽しもう!
ゴシック建築の特徴や、歴史・代表的な建物がわかった!
ゴシック建築の最大の特徴は、天国をおもわせるような、軽やかに上にのびる造りと光のあふれる空間です。新しく力をつけ始めていた都市をまとめるため、ほかの都市に埋もれずに生き抜くために、都市のランドマークとして立派な聖堂がつくられました。
ヨーロッパ旅行に行くときは、現在もランドマークとして姿を残す大聖堂を見て、歴史を想像してみてください。
ゴシック建築ってよく聞くけど、どんな建物?