建築様式とは?
ガイドブックや建物を紹介する本などを見ていると、建築様式という言葉に出会うことがあります。建築様式とは、ある共通する特徴をもった建築の手法、建造物の様式のことです。
建築様式は、時代や宗教、地域性に影響されたものが多く、建築様式を知ることは、建物自体を知ることに繋がります。建物ごとの建築様式の違いを知り、建物についての理解を深めてみましょう。
ヨーロッパの建築様式
ヨーロッパでは、古くから多くの建築様式が生み出されてきました。特にフランスやイタリア、ドイツなどでは、多くの特徴的な建築様式の大聖堂や教会が世界遺産に認定されています。
同じヨーロッパと言えど、宗教観の違いや時代の違いによって、異なる建築様式を生み出してきました。建築様式の違いはありますが、美しく共存する街並みが特徴的です。
特徴的な建築様式①:ギリシャ建築
ギリシャ建築は、ヨーロッパ建築の起源とも言える建築様式です。紀元前8世紀頃は木造でしたが、時代が進むに連れて石造技術が発達し、石による建築物が増えていきます。ギリシャ建築は、柱周りなどの細部の装飾や黄金比を用いたデザインが特徴的です。
装飾性の高いイオニア式、ペロボネソス半島と南イタリアを発祥とするドーリア式、イオニア式の発展系であるコリント式などがあります。
ギリシャ建築の有名な建物:パルテノン神殿
パルテノン神殿は、ギリシャ建築として有名な建物の一つです。パルテノン神殿は戦争の勝利を祝って捧げられた神殿で、10年もの歳月をかけて完成しました。高さ約10メートルの柱が東西に8本南北に17本ずつ、計46本並んでいます。
1687年にヴェネツィア軍がオスマン帝国の火薬庫として使われていたパルテノン神殿を攻撃し、大きな被害を受けて現在のような姿になりました。
公式サイトURL | http://odysseus.culture.gr/index_en.html |
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電話番号 | +30 21 0321 4172 |
営業時間 | 08:00-18:00 |
特徴的な建築様式②:ロマネスク様式
ロマネスク様式は、10世紀頃にキリスト教の終末思想が広がった時代にヨーロッパで発展してきた建築様式です。ロマネスクとはローマ風という意味で、古代ローマの浴場や宮殿に用いられたバシリカ建築を基本としながら、中央の身廊の両側に列柱で区切られた側廊をもっています。
ラテン語などの文字を読むことのできない一般の人々のために、聖書の物語やイエスの教えが装飾されています。
ロマネスク様式の有名な建物:シュパイア大聖堂
ドイツにあるシュパイア大聖堂は、ロマネスク建築の建物として有名です。火災や戦災などによって何度も破壊されていますが、都度再建されています。
シュパイア大聖堂の特徴は、4つの塔と2つのドームを備える聖堂を持つことです。大聖堂入口にある巨大な聖水盤は、司教菅区と世俗社会の境界線と考えられています。ドイツ皇帝は、約300年に渡りシュパイア大聖堂に埋葬されてきました。
公式サイトURL | https://www.dom-zu-speyer.de/ |
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電話番号 | (06232)1020 |
住所 | Speyer Cathedral Domplatz 67346 Speyer |
営業時間 | 月~土曜:9~17時 日曜・祝日:11時30分~17時30分 |
定休日 | 無休 |
特徴的な建築様式③:ゴシック様式
ゴシック様式は、12世紀後半にフランスから生まれた建築様式です。建築技術の向上によって可能となった軽やかで明るい様式で、パリを中心に発展を遂げてきました。
「神は光なり」という聖書の言葉を体現した建築様式で、尖頭アーチに飛梁によって生み出された高い天井が連なるのが特徴的です。教会では、聖書の物語や聖人を描いたステンドグラスの窓やバラ窓が見られます。
ゴシック様式の有名な建物:ケルン大聖堂
ドイツのケルン大聖堂は、荘厳なゴシック聖堂として有名です。1248年の建築開始から、632年もの長い歳月を費やして1880年に完成しました。
正式名称を「ザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂」といい、身廊の天井高は約43メートル、翼廊の天井高は約20メートルにもなります。回廊のステンドグラスは、現存するものとしてヨーロッパ最大を誇ります。
住所 | Domkloster 4, 50667 Köln |
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公式サイトURL | https://www.koelner-dom.de/homepage |
営業時間 | 月曜~土曜 6:00~19:30 (5~10月は6:00~21:00) 日曜、祝日 13:00~16:30 |
特徴的な建築様式④:ルネサンス様式
ルネサンスは「再生」を意味する言葉で、ルネサンス様式とは、古代ギリシャやローマなどを模範とした建築様式を言います。14世紀から16世紀の時代に、フィレンツェやヴェネツィア、地中海交易で繁栄した都市国家を中心に発達しました。
円形や正方形、正多角形などの幾何学図形を用いた左右対称の造形や直線が特徴ですが、ルネサンス様式の最盛期はとても短いものでした。
ルネサンス様式の有名な建物:サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂
イタリア・フィレンツェは、ルネサンスの中心となった商業都市です。「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」は、赤茶色の瓦が広がるフィレンツェの街でひときわ目を引くルネサンス様式の代表的な建物です。
高さ約100メートル、直径約42メートルの巨大な二重円蓋は、建築家ブルネッレスキの設計によるもので、新しい聖堂建築のスタイルを生み出しました。
住所 | Piazza del Duomo, Firenze |
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公式サイトURL | https://www.ilgrandemuseodelduomo.it/ |
電話番号 | (055)2302885 / |
営業時間 | 10時~16時30分(日曜は13時30分~16時30分) |
特徴的な建築様式⑤:バロック様式
バロック様式は、16世紀から18世紀の初めにかけて反宗教改革や大航海時代の溢れるエネルギーが生み出した情熱的な建築様式です。バロックとはポルトガル語の「歪んだ真珠(バロッコ)」に由来し、過剰な装飾や陰影の強調、楕円や曲面、曲線やねじれた線などが特徴的です。
バロック様式は芸術家の表現活動と深く関係しており、裕福な王侯貴族やカトリック教会などが好んで用いました。
バロック様式の有名な建物:ヴェルサイユ宮殿
フランスの首都・パリにあるヴェルサイユ宮殿は、ルイ14世が建造を命じた壮麗な王宮であり、フランス・バロック様式建造物の最高傑作とも言われています。
ヴェルサイユ宮殿の中でもひときわ目を引くのは、全長73メートルにもなる「鏡の間」です。アーチ型の17の窓と対峙する壁面に、同じくアーチ型の17の鏡が埋め込まれています。
公式サイトURL | http://www.chateauversailles.fr/ |
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営業時間 | 4~10月 9:00~18:30 11~3月 9:00~17:30 |
定休日 | 月曜日、1/1、5/1、12/25、公式行事のある日 |
アフリカの建築様式
アフリカの建築様式としては、古代から用いられてきた古代エジプト建築や、イスラム教の信仰において発展してきたイスラム建築などが見られます。しかし、アフリカは植民地として多くの国が侵入してきた過去もあり、現存している建築物は多くはありません。
特徴的な建築様式①:イスラム建築
イスラム建築の建造物は、イスラム教の発展とともにイスラム文化が発展してきた国で見られます。一言でイスラム建築と言っても、使われた材料や技術は多岐に渡ります。イスラム建築は、偶像崇拝が禁止されたイスラム教の影響を受けて幾何学模様と文字装飾が発展したため、美しい装飾が施されているのが特徴的です。
イスラム建築の有名な建物:ウマイヤモスク
ウマイヤモスクはイスラム建築として有名な建造物であり、シリア・ダマスカスにある世界最古のモスクです。ウマイヤモスクは、ウマイヤ朝による初期イスラム建築の傑作であると言われています。他のイスラム建築との違いとして、ウマイヤ・モスクには明確な正面を持っていないことが挙げられます。
特徴的な建築様式②:古代エジプト建築
古代エジプト建築は、多くの文明に影響を与え続けてきたエジプト文明において見られる建築様式です。乾燥した気候で木材が育たないエジプトにおいて、主に建築に用いられた材料は石と日干し煉瓦です。天文学を取り入れて配置された建造物が多く、建造物の目的や建築方法など、未だに多くの謎に包まれています。
古代エジプト建築の有名な建物:ギザのピラミッド
ギザのピラミッドは、古代エジプト建築において最も巨大で有名な建造物です。クフ王のピラミッドが最大であり、平均2.5トンの石を約230万個も使われたと言われています。古代エジプト建築の象徴とも言えるピラミッドは、簡素なデザインながらも工学の技術の高さを表している建造物です。
ピラミッド建築には多くの財力も必要だったため、次第に小規模ピラミッドとなりました。
アジアの建築様式
ヨーロッパの共通点をもつ建築様式とは違い、アジアの建築様式は統一性を持たない多様な建築様式が文化ごとに開花し、独特な進化を遂げてきました。古い建築様式を用いた建造物の中には今でも現存するものも多く、多くが世界遺産に登録されています。
アジアの中でも、ヨーロッパに近い国や共通する宗教をもつ国は、ヨーロッパ建築に影響を受けた建造物が多いです。
特徴的な建築様式①:書院造
書院造は、日本を代表する建築様式の一つです。平安時代の寝殿造を元に、室町時代から作られ始めた書院をもつ武家の住宅様式のことを言います。座敷や床の間、縁側など、近代の和風住宅にも使われている造りをもつ建築様式であり、日本の文化にも大きな影響を及ぼしてきました。
書院造の有名な建物:慈照寺東求堂
京都にある慈照寺東求堂は、1485年に創建された日本最古の書院造建築です。接客用の主殿を中心に構成され、床の間や違い棚が見られます。北山文化に作られた華やかな金閣寺とは違い、慈照寺は東山文化が重んじてきたわびさびを大切にし、落ち着いたたたずまいをしています。
住所 | 〒606-8402 京都府京都市左京区銀閣寺町2 |
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公式サイトURL | https://www.shokoku-ji.jp/ginkakuji/ |
電話番号 | 075-771-5725 |
アクセス | 市バス「銀閣寺道」下車、徒歩5分 |
営業時間 | 通常8時30分~17時 12月1日~3月14日は9時~16時30分 |
特徴的な建築様式②:ビザンツ建築
ビザンツ建築は、4世紀頃にアナトリア(現在のトルコ)でローマの建築技術と東方文化が結びついて発展し、6世紀頃に最盛期を迎えました。十字架式などの聖堂建築にドーム天井を融合させたり、内装に華麗な装飾をあしらえたりしているのが特徴的です。キリスト教の布教とともに、西アジアに浸透していきました。
ビザンツ建築の有名な建物:アヤソフィア
トルコ・イスタンブールにあるアヤ・ソフィアは、ビザンツ建築の最高傑作として有名です。元はキリスト教の大聖堂でしたが、コンスタンティノープル陥落に伴いモスクに改築された歴史をもつ建物です。
中央部分に大きなドームを持ち、聖堂内は美しい宗教的絵画のモザイク画が漆喰で塗りこまれています。周囲の4本のミナレットは、モスクに転用された際に付け加えられています。
住所 | Sultan Ahmet, Ayasofya Meydanı No:1, 34122 Fatih İstanbul |
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公式サイトURL | https://muze.gen.tr/muze-detay/ayasofya |
アクセス | トラム「Sultanahmet station(スルタン・アフメット)」駅で降りて徒歩4分 |
営業時間 | 09:00~19:00(4/15〜10/31) 09:00~17:00(11/1〜4/14) |
定休日 | 月曜日、宗教的な祝日、ラマダーン(断食の期間) |
特徴的な建築様式③ムガル建築
ムガル建築は、16世紀から18世紀にかけて主にムガル帝国で建築された建築様式を指します。イスラム教のモスクや、宮殿などに使用されてきました。ムガル建築の建物は、ミナレットやアーチ型のゲート、大ドームを持つ構造です。主にインドやパキスタンなどの南アジアに多く見られる建築様式です。
ムガル建築の有名な建物:タージマハル
インド・アーグラーにあるタージマハルは、ムガル建築を代表する霊廟建築です。ムガル帝国5代皇帝であったシャージャーハン二よって1632年からおよそ20年もの歳月をかけて建築されました。
タージマハルの敷地は塀で囲まれ、霊廟本体、南門、庭園などで構成されています。南門をくぐると四つにわかれた庭園が広がっており、敷地内は完全な左右対称です。
知識をつけて旅行をより充実したものに
海外を旅すると、日本では見たことのないような造りの教会や宮殿、モスクなどの建造物を目にします。建造物に描かれた彫刻や装飾にも心惹かれることでしょう。
建築様式を知ることは、建築物の歴史的背景や宗教観を知ることにも繋がります。ぜひ建築様式を知り、世界中の心惹かれる建物についての理解を深めてみましょう。きっと、あなたの旅をより豊かなものにしてくれるはずです。