目次 [表示]
- バチカン美術館の上手なまわり方は?
- バチカン美術館のまわり方を決めるための前知識
- 入口は1つのみ
- 順路がある
- 外せない見どころ15
- バチカン美術館のまわり方①:3つの目玉作品コース
- 順路①:ピオ・クレメンティーノ美術館へ
- 順路②:ラファエロの間へ
- 順路③:システィーナ礼拝堂へ
- バチカン美術館のまわり方②:有名作品コース
- 順路①:ピナコテカ~新回廊
- 順路②:ランチ休憩~ピオ・クレメンティーノ美術館
- 順路③:地図のギャラリーへ
- 順路④:システィーナ礼拝堂~バチカン図書館
- 順路⑤:お土産ショップ~出口
- バチカン美術館を満喫するまわり方のコツ
- 行く前の準備
- 当日の美術館で
- バチカン美術館の施設情報
- バチカン美術館の入場料
- バチカン美術館の休館日
- バチカン美術館はまわり方を予習して楽しもう!
バチカン美術館の上手なまわり方は?
バチカン美術館は、世界最大級の規模であり観光客も多いため、ポイントを押さえて回らないと1日がかりになってしまいます。バチカン美術館を限られた時間でしっかり楽しむには、どのように回ればよいのでしょうか。見ておくべき作品を押さえ、時間をあまり取れない人でも楽しめるコースを確認しましょう。
バチカン美術館のまわり方を決めるための前知識
No. | 階 | 展示室 |
---|---|---|
0・23 | G | 入口・出口 |
1 | 1 | エントランスホール |
2 | ピナコテカ | |
3 | エジプト美術館 | |
4 | キアラモンティ美術館 | |
5 | 新回廊 | |
6 | ピオ・クレメンティーノ美術館 | |
7 | 2 | エトルリア美術館 |
8・9・10 | 燭台・タペストリー・地図のギャラリー | |
11 | ピウス5世の居室 | |
12 | ソビエスキの間 | |
13 | 無原罪の御祈りの間 | |
14 | ラファエロの間 | |
15 | ウルバヌス8世の礼拝堂 | |
16 | 1 | ボルジアの間・現代宗教美術 |
17 | システィーナ礼拝堂 | |
18~22 | バチカン図書館の回廊 |
バチカン美術館は、1つの美術館ではなく大小20をこえる美術館・博物館の総称であり、なかでもシスティーナ礼拝堂が有名です。順路の全長は7キロメートル、展示品2,000以上という規模にくわえ、人が多いため、入口から反対側に移動するだけでも2時間近くかかります。
バチカン美術館のまわり方を決める前に、建物の構造や順路、外せない見どころを押さえましょう。
入口は1つのみ
入口は、全体の北側に1つあるのみで、南側だけが見たい人でも北側から入る構造です。南北にはなれた建物を廊下がつないでおり、有名なシスティーナ礼拝堂は南の端にあります。システィーナ礼拝堂は、バチカン美術館と別に紹介されることもありますが、礼拝堂のみの見学チケットはありません。
順路がある
見学の順路は、分岐点以外はほぼ決まっており、通路の各所にイタリア語の案内板があります。館内は大半が一方通行であり、逆行できる順路であっても、大きな人の波にあらがうのは賢くありません。
案内板はわかりにくい部分もありますが、最大の見どころ・システィーナ礼拝堂へは、案内板の「Cappella Sistina」の文字と人の流れにしたがって進めば着けるでしょう。
外せない見どころ15
バチカン美術館に来たら外せない見どころは全部で15個あり、その中でも特に目玉作品3つは必ず見学することをおすすめします。ご紹介する見どころを参考に、ご自身の好みや時間の都合にあわせて、見る作品の目星をおつけください。
3つの目玉作品
展示室 | 作品:作者名 |
---|---|
ピオ・クレメンティーノ美術館 | ラオコーン |
ラファエロの間 | アテナイの学堂:ラファエロ |
システィーナ礼拝堂 | 最後の審判:ミケランジェロ |
7つの有名作品
展示室 | 作品:作者名 |
---|---|
ピナコテカ | 奏楽の天使:ダ・フォルリ |
聖母の戴冠:ラファエロ | |
キリストの変容:ラファエロ | |
フォリーニョの聖母:ラファエロ | |
聖ヒエロニムス:ダ・ヴィンチ | |
キリストの埋葬:カラバッジョ | |
新回廊 | プリマ・ポルタのアウグストゥス |
5つの展示場所
展示室 | おもな見どころ |
---|---|
ピオ・クレメンティーノ美術館 | ベルベデーレのトルソ |
地図のギャラリー | 地図・装飾 |
ラファエロの間 | 聖ペドロの解放:ラファエロ |
システィーナ礼拝堂 | 天地創造:ミケランジェロ |
バチカン図書館の回廊 | キリスト教美術館 |
バチカン美術館のまわり方①:3つの目玉作品コース
目玉作品 | 展示室 | |
---|---|---|
1 | ラオコーン | ピオ・クレメンティーノ美術館「八角形の中庭」 |
2 | アテナイの学堂 | ラファエロの間「謁見の間」 |
3 | 最後の審判 | システィーナ礼拝堂 |
バチカン美術館のまわり方の1つ目は、3大目玉作品のみにしぼる3時間の短縮コースです。ショートカットできる展示室には一切立ち寄らず、3作品のある展示室のみ立ち止まって鑑賞して、2時間半~3時間かかるでしょう。「時間は取れないけれど、有名どころは見ておきたい」という人におすすめのコースです。
順路①:ピオ・クレメンティーノ美術館へ
総合案内所のあるエントランスホールを左折し、エジプト美術館を通り抜けて左折、ピオ・クレメンティーノ美術館に入ります。入ってすぐの屋外の展示場所が、「ラオコーン」を展示している「八角形の中庭(ベルベデーレの中庭)」です。
古代ギリシャ・ローマ時代の彫刻が中庭の壁に並んでおり、ラオコーンは人だかりを目印に探せばわかります。
見どころ:ラオコーン(八角形の中庭)
ラオコーンは、発掘された16世紀当時、ミケランジェロが「芸術の奇蹟」と感嘆し、作風に取り入れたことで有名です。題材は「トロイアの木馬」で知られる神官ラオコーンで、贈られた木馬の危険を忠告するも聞き入れられず、海蛇に殺されてしまう瞬間を切り取っています。
ラオコーンのしなる身体や表情からあふれ出す、殺されつつある苦しさが鳥肌ものです。
順路②:ラファエロの間へ
ピオ・クレメンティーノ美術館を抜け階段をのぼり、2階廊下の3つのギャラリーを直進します。突き当りにピウス5世の居室があり、奥にシスティーナ礼拝堂へつづく下り階段がありますが、システィーナ礼拝堂からラファエロの間には進めないので左折です。
さらに左折して突き当りで右折するとラファエロの間で、「コンスタンティヌスの間」「ヘリオドロスの間」を通ると「謁見の間」です。
見どころ:アテナイの学堂(署名の間)
「アテナイの学堂」は、ラファエロが1人で仕上げた作品の1つで、ルネサンス画を代表する作品の1つでもあります。展示室のテーマは、ギリシャ哲学とキリスト教の混ざり合いであり、本作品は「聖体の議論」「パルナッソス山」とともに3大作です。
中心の2人はギリシャ哲学の権威、プラトンとアリストテレスで、遠近法と色合いの効果によって、2人に目がいくように描かれています。
順路③:システィーナ礼拝堂へ
ラファエロの間を抜けて、ウルバヌス8世の礼拝堂の先にある階段で1階へ下ります。ボルジアの間を進むと、「Cappella Sistina」の案内板のある下り階段が目印です。何度か階段を上り下りしながら礼拝堂の階下を進みますが、基本的に案内板と人の流れを頼りにしてください。
礼拝堂の中では写真撮影・おしゃべり禁止ですので、気持ちを引き締めて見学しましょう。
見どころ:最後の審判
「最後の審判」は、「ダビデ像」で有名なミケランジェロの壁画の代表作で、終末に再降臨したキリストが、再生した死者に審判をくだす緊迫した瞬間が描かれています。宗教画は、秩序ある構図・美化された描写が常識ですが、生々しい群像画で、身分を表す衣服もない描写は賛否両論でした。
キリストを中心に天国・地獄行きの人々が円を描いており、誰もが平等に裁かれるさまが読み取れます。
バチカン美術館のまわり方②:有名作品コース
バチカン美術館のまわり方2つ目は、3大目玉作品と有名作品・展示室を網羅する基本のコースです。すべてをじっくり見る時間はないので、すべて早足で見ることになりますが、バチカン美術館のあらかたを押さえられます。「バチカン美術館で半日過ごす」という人におすすめで、ランチ休憩をのぞけば4時間ほどでも可能です。
順路①:ピナコテカ~新回廊
エントランスホールを右折し、中世~ルネサンスの絵画が展示されているピナコテカに行きます。「奏楽の天使」やラファエロ自筆の3作、ダ・ヴィンチの「聖ヒエロニムス」を鑑賞し、来た道を戻るとエントランスホールです。
反対方向へ進んで、エジプト美術館を通って右折、キアラモンティ美術館を足早に見ながら直進すると、古代ギリシャ・ローマの彫刻が展示された新回廊があります。
見どころ:キリストの変容(ピナコテカ)
「キリストの変容」は、聖母子像を多く描いたことで有名なラファエロが、短い生涯の最後に手掛けた絵です。聖書の「人間であるイエスが、神性を弟子たちにだけ明かす」という場面に、つづく節の「悪魔に憑かれた少年を、イエスが治癒する」という場面を取り入れました。
上部に神々しく輝くイエスたち、下部に神の救いを求める群衆とを描き分けつつ、2つの場面が連続しています。
見どころ:奏楽の天使(ピナコテカ)
「奏楽の天使」は、遠近法などのルネサンス期の技法を確立するのに貢献したメロッツォ・ダ・フォルリの作品です。キリストの昇天を描いた壁画の一部でしたが、飾っていた聖堂の工事でバラバラにされ、一部分がバチカン美術館に引き取られました。
天使と青空の対比が鮮やかで美しく、体を後ろに倒し首をかしげる天使は、「見事な遠近法で描かれている」と当時から評判でした。
順路②:ランチ休憩~ピオ・クレメンティーノ美術館
キアラモンティ美術館の先にある外部通路へ左折すると、軽食の食べられる「カフェ・ラ・ピーニャ」があります。ランチ休憩で気分転換をしたら、外部通路を戻り左折、突き当りで左折すると、古代ギリシャ・ローマ作品のあるピオ・クレメンティーノ美術館です。
「八角形の中庭」「動物の間」「ミューズの間」「円形の間」「ギリシャ十字の間」の5室にわかれています。
見どころ:ベルベデーレのトルソ(ミューズの間)
「ベルベデーレのトルソ」は、古代ギリシャ・ローマの彫刻で、作者・制作年は、ラオコーンと同じように不明です。「トルソ」とは身体の一部を欠いた彫刻を指し、教皇に修復をたのまれたミケランジェロが「このままが美しい」と拒否した話が知られています。
システィーナ礼拝堂の「最後の審判」上部の天井画に描かれた「預言者ヨナ」は、トルソがモデルです。
順路③:地図のギャラリーへ
ピオ・クレメンティーノ美術館の東半分には2階があり、ローマ建国前のイタリア地域にあったエトルリアの美術品を展示するエトルリア美術館があります。早足で見たら、2階廊下部分の燭台のギャラリー・タペストリーのギャラリーを進んでください。
16世紀イタリアの精密な地図が飾られた「地図のギャラリー」に入ると、シックな雰囲気が一気にきらびやかになります。
見どころ:地図のギャラリー
地図のギャラリーの見どころは、廊下の両サイドに飾られた40枚の地図の精密さです。つくられたのは16世紀で、日本では戦国時代真っただ中、織田信長から豊臣秀吉に覇権が移るころだったと思うと技術の高さにおどろきます。照らされた天井や、壁・窓枠の装飾はきらびやかで温かみがあり、思わず見とれる美しさです。
順路④:システィーナ礼拝堂~バチカン図書館
システィーナ礼拝堂は「最後の審判」の反対端、礼拝堂の北東にある出入口から退出します。1階の廊下には、まずサン・ピエトロ・マルティーレ礼拝堂があり、その先にフレスコ画の展示されたアルドブランディーニの婚礼の間、さらに先はキリスト教美術館です。
キリスト教ではない宗教の美術品を展示する世俗博物館までがバチカン図書館の回廊であり、突き当りの下り階段で終わります。
見どころ:ミケランジェロの大天井画
ミケランジェロによる大天井画は、システィーナ礼拝堂にあり、「最後の審判」につぐ傑作です。「天地創造」がテーマであり、9つの場面に分けて、世界の創造・人類の始まり・人間性の確立が描かれています。なかでも「アダムの創造」が有名で、描かれているのは最初の人間アダムに神が命を吹き込む瞬間です。
神と天使を包む赤い布は脳または心臓、細い緑の布はへその緒ともいわれます。
順路⑤:お土産ショップ~出口
バチカン図書館の回廊から階段をくだって左折すると、美術館でもっとも大きいお土産ショップがあり、バチカン市国や美術館のグッズが並びます。その先にある螺旋階段は、上りと下りが交わらない二重構造ながら、上からは一重に見える不思議な設計で有名です。
階段を降りるとゲートがあり、右手にある窓口であずけた荷物を受け取って、オーディオガイドなど借りたものを返します。
バチカン美術館を満喫するまわり方のコツ
バチカン美術館を満喫するまわり方のコツは、事前準備に2つ、当日の行動に4つあります。一大テーマパークに行くつもりで、下調べをしっかりして、当日はできるかぎり身軽にすることが大切です。取り入れると時間的にも精神的にも余裕ができますので、ご参考にしてください。
行く前の準備
チケットは事前予約
言語 | |
---|---|
公式サイト | 英語 |
予約代行サイト | 日本語 |
チケットは事前予約をして、美術館前でのチケット購入待ちの行列を回避するのがおすすめです。チケットの当日購入は、7・8月のハイシーズンは2~3時間待ちが普通ですので、閑散期の11~2月以外は予約すべきでしょう。前述した2つのおすすめコースは、いずれも事前予約をして購入待ちをせずに入場する想定です。
ガイドブックで予習
ガイドブックや館内図、当記事の紹介などをもとに、見たい作品の場所とまわるコースを確認しておきましょう。「美術館の日本語ガイドブックをわざわざ買うのはもったいない」という人には、バチカン美術館の公式サイトにある館内図がおすすめです。
2種類の館内図が無料ダウンロードでき、どちらも英語ですが、2つあわせて見るとおよそ把握できます。
当日の美術館で
ガイドブックのコピーを持参
当日は、自分が問題なく理解できるガイドブックのコピーを持っていくことがおすすめです。美術館の受付にも無料の館内図はありますが、イタリア語でわかりにくいようですので、事前に準備したほうがよいでしょう。
ガイドブック自体を持っていくと重くて人混みでは扱いにくいし、重荷になるため、必要な部分だけをコピーして持っていくと便利です。
バチカン美術館内でランチ休憩
美術館にはレストランが2店舗、カフェが4店舗(1店はレストランと併設)あるので、ランチ休憩に利用すると、集中して鑑賞できます。2階廊下からシスティーナ礼拝堂までは大混雑ゾーンなので、立ち寄る前か後で休憩をはさむのがおすすめです。
基本入場チケットにはランチセットのオプションがありますが、量があるそうなので、軽く済ませたい人は各自で入るとよいでしょう。
お土産は出口でまとめて
バチカン美術館のお土産は出口でまとめて調達し、順路の各所にあるお土産ショップでは我慢しましょう。お土産は鑑賞するときの荷物になりますし、人混みでなくす心配もあります。お土産ショップは、出口の螺旋階段そばにある店舗が最大ですので、負担・品揃えどちらを考えても最後に買うのがおすすめです。
バチカン市国グッズ・美術館グッズは迷わず買う
お土産ショップで売っているバチカン市国グッズ・バチカン美術館グッズは、いいなと思ったら迷わず買っておきましょう。バチカン市国が運営する公式店は3つだけで、バチカン美術館にあるお店が最大ですし、美術館グッズはバチカン美術館でしか買えませんので、ここが買い時です。
バチカン美術館の施設情報
住所 | 〒00165 Viale Vaticano, Rome |
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公式サイトURL | http://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en.html |
電話番号 | +39-06-69884676 +39-06-69883145 |
メールアドレス | [email protected] |
アクセス | 地下鉄A線「テルミニ(Termini)」駅から8分の「オッタヴィアーノ(Ottaviano)」駅で下車、徒歩9分 |
営業時間 | 月曜~木曜:10:00~20:00(最終入場18:00) 金曜・土曜:10:00~22:00(最終入場20:00) |
予約 | あり https://tickets.museivaticani.va/home |
バチカン美術館の入場料
入場料 | 一般 | 6~18歳・学生* |
---|---|---|
基本入場 | 17€ | 8€ |
ガイドツアー | 28.5€ | 19.5€ |
バチカン美術館の入場料は大人17ユーロで、基本入場チケットのみオーディオガイドとランチの有料オプションがあります。オーディオガイドは日本語に対応しており、8ユーロ、事前予約なら7ユーロです。ランチは13時15分の入場回までのオプションで、大人・子供メニューを予約できます。
事前予約は、手数料がかからずチケット代金のみになりました(2020年6月15日現在)。
バチカン美術館の休館日
1月 | 1, 6日 |
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2月 | 11日 |
3月 | 19日 |
4月 | 13日 |
5月 | 1日 |
6月 | 29日 |
8月 | 15日 |
12月 | 8, 25, 26日 |
バチカン美術館の休館日は、毎週日曜日と1月1日・6日・2月11日・3月19日・4月13日・5月1日・6月29日・8月15日・12月8日・25日・26日です。毎月の最終日曜日のみ例外で、月1回の無料開放日として営業しています(2020年6月15日現在、一時停止中)。
バチカン美術館はまわり方を予習して楽しもう!
見たい場所を絞って順路を決めて行こう!
バチカン美術館は、全体像を頭に入れ、まわり方を決めてから訪れると、無駄な時間を過ごさずに楽しめます。人で大にぎわいする広大な美術館ですし、調べるとより興味も増すので、準備段階から気合を入れて楽しみましょう。自宅のパソコンで楽しめる美術館公式のバーチャルツアーも参考にしてみてはいかがでしょうか。
広大で大混雑してるバチカン美術館は、どうまわればいい?