花の逸話から名付けられた漢字表記
花の逸話や伝説から付けられた漢字表記の花は、見た目からは想像できない意外な由来を持っていることが多いです。難しい表記の和名も多いのですが、花が持つ背景を知り、いつもと違う角度から花の咲く姿を楽しみましょう。
①カンナ
檀特
赤や黄色など鮮やかな色合いが特徴のカンナは、和名では壇特や曇華と呼ばれています。メキシコやペルーなど熱帯地域を原産国とする球根花です。
壇特の名前の由来は諸説ありますが、釈迦伝説に由来していると言われています。釈迦の前身である須大孥太子(シュタヌタイシ)が修行をした山とされている檀特山と、そこでブッダの足から流れた血から生えたのがカンナである、という説が有力です。
②タンポポ
蒲公英
たんぽぽは漢字で蒲公英と書きます。日本では道端や公園でよく見かける馴染み深い花ですが、漢字表記は簡単でないためか、あまり有名ではありません。
漢字の由来は、たんぽぽを開花する前に収穫して乾燥させた中国の漢方からと言われています。「蒲公英(ほこうえい)」と呼ばれており、そのまま日本でもたんぽぽの漢字として使うようになったと考えられています。
③ツツジ
躑躅
つつじは、漢字では躑躅と書き、音読みではテキチョクと読みます。躑躅には、つつじの他にも「足踏みする」「行き戻りする」「ためらう」といった意味があります。
一説によると、ツツジの葉には毒があり、葉を食べた羊が動けなくなり足踏みをする、ということから躑躅をツツジと読むようになったと言われています。他にも、思わず足を止めてしまうほどの美しさという意味が名前の由来である、とする説もあります。
④シロツメクサ
白詰草
シロツメクサの和名は白詰草です。カタカナで表記されることも多いですが、正式な和名としては白詰草が登録されています。
日本では俗称のクローバーのほうが広く親しまれており、幸せの象徴として有名です。海外から荷物を運ぶ時に緩衝材として使用されたことが名前の由来と言われています。逸話とは少し違いますが、花の使用用途がそのまま漢字表記に使われた珍しい例です。
⑤プルメリア
印度素馨
プルメリアは、漢字で印度素馨と表記します。印度とはインドのことを指し、素馨とはジャスミンやモクセイのことを指します。中国では、「白くて香りがよい花」という意味を持っています。
香りがよく花持ちがよいことから、ハワイやタヒチではレイに使用されています。一方でフィリピンやマレーシアでは墓地や幽霊を連想させる花とされており、文化によってイメージが大きく異なる花です。
⑥ワスレナグサ
勿忘草
センチメンタルな名前を持つワスレナグサ、漢字では勿忘草と表記します。ヨーロッパ原産の植物で、ドイツ名はVergissmeinnicht、英語名はForget-me-notです。
中世ドイツに伝わる悲恋伝説から名付けられたと言われており、「私が死んでも私を忘れないで」という意味が込められています。和名の勿忘草は1905年、植物学者の川上滝弥によって訳されました。
花名の漢字には意外な意味が込められている!
花の漢字表記には、花の見た目を表す名前や恋人への想いが込められた名前、仏陀にちなんだ名前など、さまざまな由来があります。漢字は1文字だけでも多様な意味を表すので、漢字表記を知るだけで簡単に花の背景や特性を想像できるかもしれません。
さまざまな花の漢字表記を知り、ぜひ花の歴史にも想いを馳せてみてください。